第二章
翌朝になりマチルダは微睡みながら目を覚ます。ゆっくりと状態を起こしてから周囲を見回す。今更ながらにこんな可愛らしく愛らしい部屋で熟睡できた事に驚きつつ時間を確認すると既に時計の針は11時を示していた
(!!お、俺そんなに寝ていたのか!?)
確かに就寝した時間は遅かった気もするが…自分でも予想以上に眠っていたとは思わず慌てて飛び起きると、急ぎ足で鏡台に向かいとりあえず寝癖だけ直して部屋を飛び出し工房へ向かうと、二人はティーカップ片手に話し込んでいる最中だったが、マチルダがやってきたのを見て話を中断するとミクリアが笑顔で手を振って合図してくれた。
「やぁおはようマチボーイ♪昨日はミクリアお兄さん特性のラブリーなお部屋でよく眠れたようだね~。随分すっきりした顔をしているよ」
「あ、あの…すみません俺…思いのほか寝ちゃって…その……」
『遅いぞ童。昨日に引き続き本当に寝坊助じゃのう』
「す…すみません…」
まだ彼女の扱いと言うべきか……本人的には普通なのだろうがどうにも彼女の口調というのは慣れないので、どうしても反射的に謝ってしまう…
とはいえ、特に二人とも気にもしていなかったようなので安心はしたが…何だかんだ言っても昼前。本当なら昨日の時点でカナメのことを報告したら帰るつもりだったのだが、もう遅いから。とわざわざ泊めて貰っておいて何もせず帰るのは流石に申し訳ないので、せめて何か仕事で手伝えることは無いかと思いミクリアに聞いてみたが…
「ん?あぁ気にしなくても良いよ。ミクリアお兄さんの仕事は基本的に無い方が良いからね 君もそうだろう?」
やんわりお断りされてしまったのだが、確かにお互いに生業としていることは誰かの死で成り立っていると言う事。それらを扱っているのを思うと確かに無い方が安心ではあるのだが…それでもやはり彼には何かと世話になってばかりなので気が引けてしまう。
「あ、あの……。それならせめて、今度何かお礼の品を持ってきますから…」
「あーいいよいいよそんなの、お兄さんは別に見返り目的でやってるわけじゃないからね。若きマチボーイが寝てる間。お兄さんは代わりに姐さんにオトナな話で構って貰ってたし♡」
『貴様が酒一つであんなに乱れるとはなぁ…?くっくっく、途中から「熱い」と言って脱いでそのままワシに…「ちょ!姐さん!!待って下さいよ~!ミクリアお兄さんの夜のお顔とかそういう一面は有料制なんですよ」
一体どこからどこまでが本当なのか分からないノリで喋る二人のテンションに圧倒されてはいたが、慌ててカナメの言葉を否定する彼の表情や仕草、口ぶりがどことなく自分と接しているときとは違いムリして演技しているような気がしたのだが…顔を赤くして否定している様子を見ていると何故かこちらまで恥ずかしくなってきたのでそっと視線をそらした。
「…えっと…では、色々とお世話になりました。俺たちはこれで失礼します」
「うん、またいつでもおいで。仕事以外の時でも、ミクリアお兄さんは君たちの味方だからね」
そう言って彼はよしよし。と頭を撫でてくれた。普段なら手の甲をつねったりして子供扱いするなと抵抗するところだが…何となくだが今はその手から伝わる温かさが心地よかった
玄関までお見送りされ、後は用事も無いのでさっさと帰ろうと王都の中央にある噴水広場を通り抜けて行こうとしたときだった。門番の兵士達が身につけている銀色の甲冑姿では無く、深緑色の軍服に身を包んだ者達が道行く民衆を呼び集めており、その人混みに巻き込まれる形でマチルダ達は何だかんだ最前列に来てしまった。
『なんじゃなんじゃ一体!変な奴らもしゃしゃり出てきおってからに』
「…国王陛下直轄の近衛兵ですよ。ちなみに…あ、ほら 階段の近くにローブを着たピンク色の髪をした人が居るでしょう?あの人が今の国王に雇われている賢者の方です」
早く帰りたかったのに…と不機嫌になるカナメに、ひそひそとした小さな声で説明してやるが、階段の方へ視線を向けた彼女は苛立った様子で舌打ちした。
『アイツが今の賢者ぁ?ワシら四季族という存在を否定して排除しておきながら、性懲りも無く側に置いとるのか……。』
先代が統治していた頃までは、神と崇められた存在の彼らは人々を愛し、人と共存することを喜び、時には知恵や実りを授けてくれた存在。四季族に育てられたカナメにとって、一方的な国の方針で今まで世話になった恩人を徹底して迫害し、そして神から禁忌の存在と貶めた国王のやり方は、到底許せるものではなかった。
それにも関わらず…何事も無かったかのように、彼らと同じく魔法に長けた賢者を傍にに置いているというのは……あまりにも身勝手で、傲慢な行為といっても過言ではない
…出会って日は浅いといえ今まで見ていた彼女は常に自信満々で偉ぶっていたのに…まるで別人のように苦々しく憎悪のこもった眼で賢者を睨み付ける様に、マチルダは不安になって声を掛けようとしたが…
『…本当は一秒でも早う立ち去りたいほど不愉快じゃが、この状況では身動きができんからな。大人しくしてやろう』
何とか怒りを堪えてくれたので安心して壇上に視線を戻そうとしていると、不意にカナメに袖が引っ張られた。
(!!お、俺そんなに寝ていたのか!?)
確かに就寝した時間は遅かった気もするが…自分でも予想以上に眠っていたとは思わず慌てて飛び起きると、急ぎ足で鏡台に向かいとりあえず寝癖だけ直して部屋を飛び出し工房へ向かうと、二人はティーカップ片手に話し込んでいる最中だったが、マチルダがやってきたのを見て話を中断するとミクリアが笑顔で手を振って合図してくれた。
「やぁおはようマチボーイ♪昨日はミクリアお兄さん特性のラブリーなお部屋でよく眠れたようだね~。随分すっきりした顔をしているよ」
「あ、あの…すみません俺…思いのほか寝ちゃって…その……」
『遅いぞ童。昨日に引き続き本当に寝坊助じゃのう』
「す…すみません…」
まだ彼女の扱いと言うべきか……本人的には普通なのだろうがどうにも彼女の口調というのは慣れないので、どうしても反射的に謝ってしまう…
とはいえ、特に二人とも気にもしていなかったようなので安心はしたが…何だかんだ言っても昼前。本当なら昨日の時点でカナメのことを報告したら帰るつもりだったのだが、もう遅いから。とわざわざ泊めて貰っておいて何もせず帰るのは流石に申し訳ないので、せめて何か仕事で手伝えることは無いかと思いミクリアに聞いてみたが…
「ん?あぁ気にしなくても良いよ。ミクリアお兄さんの仕事は基本的に無い方が良いからね 君もそうだろう?」
やんわりお断りされてしまったのだが、確かにお互いに生業としていることは誰かの死で成り立っていると言う事。それらを扱っているのを思うと確かに無い方が安心ではあるのだが…それでもやはり彼には何かと世話になってばかりなので気が引けてしまう。
「あ、あの……。それならせめて、今度何かお礼の品を持ってきますから…」
「あーいいよいいよそんなの、お兄さんは別に見返り目的でやってるわけじゃないからね。若きマチボーイが寝てる間。お兄さんは代わりに姐さんにオトナな話で構って貰ってたし♡」
『貴様が酒一つであんなに乱れるとはなぁ…?くっくっく、途中から「熱い」と言って脱いでそのままワシに…「ちょ!姐さん!!待って下さいよ~!ミクリアお兄さんの夜のお顔とかそういう一面は有料制なんですよ」
一体どこからどこまでが本当なのか分からないノリで喋る二人のテンションに圧倒されてはいたが、慌ててカナメの言葉を否定する彼の表情や仕草、口ぶりがどことなく自分と接しているときとは違いムリして演技しているような気がしたのだが…顔を赤くして否定している様子を見ていると何故かこちらまで恥ずかしくなってきたのでそっと視線をそらした。
「…えっと…では、色々とお世話になりました。俺たちはこれで失礼します」
「うん、またいつでもおいで。仕事以外の時でも、ミクリアお兄さんは君たちの味方だからね」
そう言って彼はよしよし。と頭を撫でてくれた。普段なら手の甲をつねったりして子供扱いするなと抵抗するところだが…何となくだが今はその手から伝わる温かさが心地よかった
玄関までお見送りされ、後は用事も無いのでさっさと帰ろうと王都の中央にある噴水広場を通り抜けて行こうとしたときだった。門番の兵士達が身につけている銀色の甲冑姿では無く、深緑色の軍服に身を包んだ者達が道行く民衆を呼び集めており、その人混みに巻き込まれる形でマチルダ達は何だかんだ最前列に来てしまった。
『なんじゃなんじゃ一体!変な奴らもしゃしゃり出てきおってからに』
「…国王陛下直轄の近衛兵ですよ。ちなみに…あ、ほら 階段の近くにローブを着たピンク色の髪をした人が居るでしょう?あの人が今の国王に雇われている賢者の方です」
早く帰りたかったのに…と不機嫌になるカナメに、ひそひそとした小さな声で説明してやるが、階段の方へ視線を向けた彼女は苛立った様子で舌打ちした。
『アイツが今の賢者ぁ?ワシら四季族という存在を否定して排除しておきながら、性懲りも無く側に置いとるのか……。』
先代が統治していた頃までは、神と崇められた存在の彼らは人々を愛し、人と共存することを喜び、時には知恵や実りを授けてくれた存在。四季族に育てられたカナメにとって、一方的な国の方針で今まで世話になった恩人を徹底して迫害し、そして神から禁忌の存在と貶めた国王のやり方は、到底許せるものではなかった。
それにも関わらず…何事も無かったかのように、彼らと同じく魔法に長けた賢者を傍にに置いているというのは……あまりにも身勝手で、傲慢な行為といっても過言ではない
…出会って日は浅いといえ今まで見ていた彼女は常に自信満々で偉ぶっていたのに…まるで別人のように苦々しく憎悪のこもった眼で賢者を睨み付ける様に、マチルダは不安になって声を掛けようとしたが…
『…本当は一秒でも早う立ち去りたいほど不愉快じゃが、この状況では身動きができんからな。大人しくしてやろう』
何とか怒りを堪えてくれたので安心して壇上に視線を戻そうとしていると、不意にカナメに袖が引っ張られた。
