HAZAMA―未来を映す水鏡―
二人は数年前より流れるようにこの王都へ移り住んだのだが、身寄りもなく困っているときに、この教会を運営しているマザーに出会い、住み込みでシスターを始めた。と以前教えてくれたことがあった。
別にこちらから聞いた訳でもないのだが、特にレルクが何かと理由を付けては話しかけて来て、その時に何となくで教えてくれたのだが…こうして絡まれていると、彼女たちを目当てに来ている男性信者からの視線が痛いので出来る事ならほっといてほしい…。とマチルダは少しうんざりしていた
「もぅセフィったら妬いてるの?大丈夫。アタシはセフィ一筋なんだから~♡」
「愚問ね。遊びと本命の区別ぐらい判るわ。何年貴女を見ていると思っているの?」
「キャー!もぅ!セフィったら~!堂々とノロケちゃうなんて素敵!愛してる!抱いて♡!」
声高らかにきゃあきゃあと喜びを露わにして熱烈なラブコールを送るレルクとは対照的に、セフィリアは至極落ち着いた表情のまま彼女の頬を撫でたりして軽く相手をしつつ「そろそろお祈りの時間よ。落ち着きなさいな」と諭したのだが…どうやら納得できないらしく、むぅ…と頬を膨らませむくれてしまった。
こうやって拗ねてしまっては中々に駄々をこねて動いてくれなくなるので、セフィリアはやれやれとため息を吐いた後。彼女の耳元にそっと唇を寄せ「夜までガマンしなさいな。ちゃんと可愛がってあげるから…」と囁きそして頬に軽くキスをしてご機嫌を取るのだが、その光景を見ていたマチルダは誰にも聞こえないほど小さい声で「あぁ…うっとおしい…」と本音を吐露した。
二人だけの世界に浸る様を見て、周囲からは次々と感嘆の溜息が聞こえてきた。
一定の信者からすればこのやり取りはご褒美なのかもしれないが…度々ちょっかいをかけてきたり、目の前でイチャついたりする姿しか見てないので苦手意識しかなかった。 何より生憎とそっち方面の趣味は持ち合わせてない…
「ねぇマチルダ君。アンタお祈り終わったのなら後でお茶でも飲みながらお話しましょ?愚痴ぐらいなら聞いてあげるわよ?あ、それとも年頃だからそっちの方がご所望?」
「…いえ、まだ行くところがありますので…」
「私たちも仕事が残っているから浮気はほどほどになさいな。マザーに怒られてしまうわ」
「はいはぁ~い。じゃあまたね~。今度来たらサービスしてあげるわよ♡」
「……では」
マチルダが会釈をして足早にその場から離れると背後から「あーぁ…もう少しぐらい相手してくれたっていいのにぃ」や「仕方ないわ。あの子にはあの子の事情があるのだから」と二人が自分のことを話している会話が微かに聞こえたが、余計な時間が掛かってしまい疲労感もあったので無視して教会を後にした。
(お祈りは終わったし…あとは…)
教会を出た時には既に陽が傾き始めており、空は茜色に染まっていた。
(もうすぐ夜になる…急がないと)
夜になれば王都の出入りが禁止されてしまう。そうなるとどこかで野宿する羽目になってしまうので、マチルダは駆け足気味に王都の端まで移動をした。中央の通りから離れていくにつれて徐々に人通りは減っていき、入り組んだ路地裏を使ってショートカットしながら辿り着いた先にあった建物の前で足を止めた。
別にこちらから聞いた訳でもないのだが、特にレルクが何かと理由を付けては話しかけて来て、その時に何となくで教えてくれたのだが…こうして絡まれていると、彼女たちを目当てに来ている男性信者からの視線が痛いので出来る事ならほっといてほしい…。とマチルダは少しうんざりしていた
「もぅセフィったら妬いてるの?大丈夫。アタシはセフィ一筋なんだから~♡」
「愚問ね。遊びと本命の区別ぐらい判るわ。何年貴女を見ていると思っているの?」
「キャー!もぅ!セフィったら~!堂々とノロケちゃうなんて素敵!愛してる!抱いて♡!」
声高らかにきゃあきゃあと喜びを露わにして熱烈なラブコールを送るレルクとは対照的に、セフィリアは至極落ち着いた表情のまま彼女の頬を撫でたりして軽く相手をしつつ「そろそろお祈りの時間よ。落ち着きなさいな」と諭したのだが…どうやら納得できないらしく、むぅ…と頬を膨らませむくれてしまった。
こうやって拗ねてしまっては中々に駄々をこねて動いてくれなくなるので、セフィリアはやれやれとため息を吐いた後。彼女の耳元にそっと唇を寄せ「夜までガマンしなさいな。ちゃんと可愛がってあげるから…」と囁きそして頬に軽くキスをしてご機嫌を取るのだが、その光景を見ていたマチルダは誰にも聞こえないほど小さい声で「あぁ…うっとおしい…」と本音を吐露した。
二人だけの世界に浸る様を見て、周囲からは次々と感嘆の溜息が聞こえてきた。
一定の信者からすればこのやり取りはご褒美なのかもしれないが…度々ちょっかいをかけてきたり、目の前でイチャついたりする姿しか見てないので苦手意識しかなかった。 何より生憎とそっち方面の趣味は持ち合わせてない…
「ねぇマチルダ君。アンタお祈り終わったのなら後でお茶でも飲みながらお話しましょ?愚痴ぐらいなら聞いてあげるわよ?あ、それとも年頃だからそっちの方がご所望?」
「…いえ、まだ行くところがありますので…」
「私たちも仕事が残っているから浮気はほどほどになさいな。マザーに怒られてしまうわ」
「はいはぁ~い。じゃあまたね~。今度来たらサービスしてあげるわよ♡」
「……では」
マチルダが会釈をして足早にその場から離れると背後から「あーぁ…もう少しぐらい相手してくれたっていいのにぃ」や「仕方ないわ。あの子にはあの子の事情があるのだから」と二人が自分のことを話している会話が微かに聞こえたが、余計な時間が掛かってしまい疲労感もあったので無視して教会を後にした。
(お祈りは終わったし…あとは…)
教会を出た時には既に陽が傾き始めており、空は茜色に染まっていた。
(もうすぐ夜になる…急がないと)
夜になれば王都の出入りが禁止されてしまう。そうなるとどこかで野宿する羽目になってしまうので、マチルダは駆け足気味に王都の端まで移動をした。中央の通りから離れていくにつれて徐々に人通りは減っていき、入り組んだ路地裏を使ってショートカットしながら辿り着いた先にあった建物の前で足を止めた。