HAZAMA―未来を映す水鏡―
それから目的地に向かう間はお互い黙ったまま歩き、やがてミクリアの店に辿り着くとチャイムを鳴らしてから店内へと入った。
「こんばんは」
『邪魔するぞ』
玄関で待機していると、チャイムの音に呼ばれミクリアが出迎えてくれた
「はいはい、いらっしゃいま…。お、や~いらっしゃいマチボーイ!と…」
いつも通りのテンションでマチルダを出迎えたのだが…隣にいたカナメの姿を見た途端。彼は一瞬だけ表情を寂しそうに曇らせ動きが止まったが、すぐにいつもの調子に戻るとニコニコと笑いながら恭しくカナメへ一礼した
「現代への蘇りおめでとうございます…女王様」
『はっ!相変わらず口先だけは上等な小賢しい奴め。 …それにしても相変わらず何じゃこの店名と全く似つかわしくない、ふぁんしーな飾り付けは…貴様の店はいつから雑貨屋になったのじゃ!?仮にも葬儀屋と称するならばもっと荘厳な雰囲気を出せと前々から言っておるじゃろ!』
マチルダがずっと昔から思っていたけど実はツッコミが入れられていなかった一件を代弁するかの様に、カナメが怒濤のツッコミを入れてくれたのだが…ミクリアは悪びれる様子も無くケラケラと笑い
「えぇ~?良いじゃないですかぁ!可愛い方が、ミクリアお兄さんの心の幼女的にはモチベが上がるんですよ。…まぁ訪れたお客の10人中8人は一度出直して表の看板を見直すんですが!」
ハハハッと冗談なのか本気なのか判別しにくい二人のやりとりに、マチルダは呆然としたまま会話のラリーを見ていたが、ようやく思い出したようにミクリアが声を掛けてくれた。
「あ、会いに来てくれた所悪いんだけどマチボーイ。ちょっと姐さん借りるよ?お兄さん、積もる話がいーっぱいあってね~
君は…うん、そろそろ夜になるし出入りも禁止されるからね。お兄さんの部屋に泊まっていきなよ。子供が夜に一人歩きしてたら危ないし、よい子は寝る時間と言うだろう?」
「え?あ、えっと…俺はあの…」
「ほらほら姐さん。こっちの工房にも色々お兄さんのコレクションがあるんですよ~。どれも心の幼女がトキメキしちゃって買った分で~…。ほら、マチボーイはこっちね」
『ほぉ~う。折角じゃ 貴様のこれくしょんとやらを見てやろう』
「あ…あの。ちょっと待って下さい!俺は報告に来ただけで泊まるなんて言っ「まぁまぁ遠慮しないで~さあさあ」
半ば強引にミクリアに背中を押されながら、マチルダは案内された部屋に放り込まれてしまった。
今までは彼の工房と二階のあの空間の部屋以外、入ったことも無かったので今回通されたのは初めてだったのだが…
「…うわぁ……」
彼が口癖のように言っている心の幼女とやらが荒ぶったのか、ベッドやクローゼットと言った家具から絨毯やカーテンに至るまで全てが、ピンクと白を基調とした可愛らしいデザインの品で統一されていた。
まるでおとぎ話のお姫様にでもなったかのような気分に浸れる場所なので、見る相手が違えばとても喜ばしい空間にはなっているのだろうが…残念なことに彼のような趣味は持ち合わせてないので、正直落ち着かなかった
(本当にあの人がここで寝起きしてるのかな…?お兄さんの部屋。とか言ってたけどどう見ても生活感無いんだよなぁ…)
ミクリアには悪いのだが、彼がこの空間で寝起きしている様子が全く想像出来ない。否、想像しようにもあまりに部屋が綺麗すぎる気がした。実は潔癖症で掃除を入念にしている。と言えばそこまでなのだが……この室内だけは時間が止まっている様に感じられた。
ずっと入り口で立ち止まったままで居るわけには行かないので、とりあえずベッドに寝転んでみた。
天蓋付きのベッドだったこともあり、違和感しかないのだが…自宅の使い込まれた古いベッドに比べ、ふかふかした柔らかい布団が全身を包む感触はとても寝心地が良かった。
「はぁ…疲れた……」
昨日に引き続き、色々な出来事が一気に起こりすぎて精神的にも肉体的にも疲労が溜まっていた。最初は戸惑いから全く落ち着かない空間ではあったのだが…誘われるように目を閉じると、すぐに睡魔がやってきて彼はそのまま意識を手放した。
「こんばんは」
『邪魔するぞ』
玄関で待機していると、チャイムの音に呼ばれミクリアが出迎えてくれた
「はいはい、いらっしゃいま…。お、や~いらっしゃいマチボーイ!と…」
いつも通りのテンションでマチルダを出迎えたのだが…隣にいたカナメの姿を見た途端。彼は一瞬だけ表情を寂しそうに曇らせ動きが止まったが、すぐにいつもの調子に戻るとニコニコと笑いながら恭しくカナメへ一礼した
「現代への蘇りおめでとうございます…女王様」
『はっ!相変わらず口先だけは上等な小賢しい奴め。 …それにしても相変わらず何じゃこの店名と全く似つかわしくない、ふぁんしーな飾り付けは…貴様の店はいつから雑貨屋になったのじゃ!?仮にも葬儀屋と称するならばもっと荘厳な雰囲気を出せと前々から言っておるじゃろ!』
マチルダがずっと昔から思っていたけど実はツッコミが入れられていなかった一件を代弁するかの様に、カナメが怒濤のツッコミを入れてくれたのだが…ミクリアは悪びれる様子も無くケラケラと笑い
「えぇ~?良いじゃないですかぁ!可愛い方が、ミクリアお兄さんの心の幼女的にはモチベが上がるんですよ。…まぁ訪れたお客の10人中8人は一度出直して表の看板を見直すんですが!」
ハハハッと冗談なのか本気なのか判別しにくい二人のやりとりに、マチルダは呆然としたまま会話のラリーを見ていたが、ようやく思い出したようにミクリアが声を掛けてくれた。
「あ、会いに来てくれた所悪いんだけどマチボーイ。ちょっと姐さん借りるよ?お兄さん、積もる話がいーっぱいあってね~
君は…うん、そろそろ夜になるし出入りも禁止されるからね。お兄さんの部屋に泊まっていきなよ。子供が夜に一人歩きしてたら危ないし、よい子は寝る時間と言うだろう?」
「え?あ、えっと…俺はあの…」
「ほらほら姐さん。こっちの工房にも色々お兄さんのコレクションがあるんですよ~。どれも心の幼女がトキメキしちゃって買った分で~…。ほら、マチボーイはこっちね」
『ほぉ~う。折角じゃ 貴様のこれくしょんとやらを見てやろう』
「あ…あの。ちょっと待って下さい!俺は報告に来ただけで泊まるなんて言っ「まぁまぁ遠慮しないで~さあさあ」
半ば強引にミクリアに背中を押されながら、マチルダは案内された部屋に放り込まれてしまった。
今までは彼の工房と二階のあの空間の部屋以外、入ったことも無かったので今回通されたのは初めてだったのだが…
「…うわぁ……」
彼が口癖のように言っている心の幼女とやらが荒ぶったのか、ベッドやクローゼットと言った家具から絨毯やカーテンに至るまで全てが、ピンクと白を基調とした可愛らしいデザインの品で統一されていた。
まるでおとぎ話のお姫様にでもなったかのような気分に浸れる場所なので、見る相手が違えばとても喜ばしい空間にはなっているのだろうが…残念なことに彼のような趣味は持ち合わせてないので、正直落ち着かなかった
(本当にあの人がここで寝起きしてるのかな…?お兄さんの部屋。とか言ってたけどどう見ても生活感無いんだよなぁ…)
ミクリアには悪いのだが、彼がこの空間で寝起きしている様子が全く想像出来ない。否、想像しようにもあまりに部屋が綺麗すぎる気がした。実は潔癖症で掃除を入念にしている。と言えばそこまでなのだが……この室内だけは時間が止まっている様に感じられた。
ずっと入り口で立ち止まったままで居るわけには行かないので、とりあえずベッドに寝転んでみた。
天蓋付きのベッドだったこともあり、違和感しかないのだが…自宅の使い込まれた古いベッドに比べ、ふかふかした柔らかい布団が全身を包む感触はとても寝心地が良かった。
「はぁ…疲れた……」
昨日に引き続き、色々な出来事が一気に起こりすぎて精神的にも肉体的にも疲労が溜まっていた。最初は戸惑いから全く落ち着かない空間ではあったのだが…誘われるように目を閉じると、すぐに睡魔がやってきて彼はそのまま意識を手放した。