HAZAMA―未来を映す水鏡―
次にマチルダが目を覚ますと同時に彼は飛び起きるようにして周囲を見回す
「……っ!!はぁ、はぁ…っ。ゆめ…?でも、俺…」
いつの間にかベッドで眠っていたようだが、今でも動機が酷く寝汗もかいているのか少し肌がべたついていた…。 ふと窓の方を見ると既に外は明るくなっており、時計を見ると正午を過ぎた頃だった
(夢…だったのかな?でも妙にリアルだったし、感覚もなんか…残ってる…)
あの不思議な体験は夢だったのか分からないが、今こうやって自分が生きているという事だけは現実だと理解できた。
「……」
マチルダは自身の左手薬指に嵌めた指輪を見てしばらくため息交じりに見つめていたが、ずっとこうしていても埒が明かないと思い立ち上がろうとした時だった。頭上から、あの時夢?で聞いた女性の声が聞こえてきた
『随分と寝ておったなぁ童』
「っ?!」
その声に驚いて慌てて顔を上げると、そこには自分と同じ褐色の肌と金色の眼をした女性が立っていた。
目元に赤い化粧と赤い殿上眉は、元々がツリ眼な彼女の顔を一層際立たせている。黒い髪が頭の両側にまるで大きな角のように結ってあり、赤い紐のリボンで留めているのか、その髪に対し一つのアクセントのように見えた。
身にまとっている服は深紅色の生地が前合わせの立て襟になっており、金糸で裾や袖に蝶を模した柄が丁寧に織り込まれている。
更には胸を強調するかのように胸元が大きく開いており、腰から裾にかけて太もも付近まで大きくスリットが入っているので移動に関しての機敏性も重視されているのだろうが…
いくら装飾として黒いレースがあしらわれていると言え、全体的に見てかなりの露出度が高く扇情的な格好をしているのだが…不思議と下品には見えず、寧ろ長身の彼女には似合っているとも言える
だがどう記憶を遡っても見たこともないその衣装からはどこか歴史を感じさせるものがあった。
マチルダは寝起きの頭で必死に彼女が誰かということを考えていたが、ようやく答えが出たので口を開いた。
「…あ、えっと…お客様ですか?すみません。緊急じゃなければ営業はまだなので」
『何を寝ぼけた事を言っておるのじゃ童。ワシは客ではないぞ。貴様がその左手に嵌めているその指輪、元々はワシが持っていたものじゃ。それだけ言われれば、もうワシが誰か分かるじゃろ?』
目の前の女性は、得意げにフフンと鼻を鳴らすのだが…ただいま絶賛施行放棄中のマチルダは、いまいち思い当たる節がなかったらしく、しばらくの間沈黙していたがやがて思いついたように
「………。あぁ、指輪の持ち主さんだったんですね。すみません、知り合いが祖父から預かったとか言っていたのでそのまま受け取ってしまい…すぐお返ししますね」
『……は?』
「え?違いましたか?」
『……』
「……」
(何なんだこの沈黙は…)
しばらくの間お互いに気まずい空気が流れてしまい、心当たりのなかったマチルダは何か返答を間違えたか?と恐る恐る彼女の顔を見上げると、完全に虚を突かれてしまっているらしくポカンとした表情を浮かべて固まっていた。
『わ…童。貴様まさかアーネストから何も聞いとらんのか?!ミクリアのガキからも??!
えぇい!何故ワシの新しい依り代はこんなすっとぼけたガキなんじゃぁぁあ!!!』
「っ?!?!」
突然目の前の女性は頭を抱えながら叫びだしてしまい、寝起き状態で尚且つ状況が全く理解できていないマチルダもその声に驚いて身体を軽く跳ねさせると、そのままベッドの上で後ずさった。
「……っ!!はぁ、はぁ…っ。ゆめ…?でも、俺…」
いつの間にかベッドで眠っていたようだが、今でも動機が酷く寝汗もかいているのか少し肌がべたついていた…。 ふと窓の方を見ると既に外は明るくなっており、時計を見ると正午を過ぎた頃だった
(夢…だったのかな?でも妙にリアルだったし、感覚もなんか…残ってる…)
あの不思議な体験は夢だったのか分からないが、今こうやって自分が生きているという事だけは現実だと理解できた。
「……」
マチルダは自身の左手薬指に嵌めた指輪を見てしばらくため息交じりに見つめていたが、ずっとこうしていても埒が明かないと思い立ち上がろうとした時だった。頭上から、あの時夢?で聞いた女性の声が聞こえてきた
『随分と寝ておったなぁ童』
「っ?!」
その声に驚いて慌てて顔を上げると、そこには自分と同じ褐色の肌と金色の眼をした女性が立っていた。
目元に赤い化粧と赤い殿上眉は、元々がツリ眼な彼女の顔を一層際立たせている。黒い髪が頭の両側にまるで大きな角のように結ってあり、赤い紐のリボンで留めているのか、その髪に対し一つのアクセントのように見えた。
身にまとっている服は深紅色の生地が前合わせの立て襟になっており、金糸で裾や袖に蝶を模した柄が丁寧に織り込まれている。
更には胸を強調するかのように胸元が大きく開いており、腰から裾にかけて太もも付近まで大きくスリットが入っているので移動に関しての機敏性も重視されているのだろうが…
いくら装飾として黒いレースがあしらわれていると言え、全体的に見てかなりの露出度が高く扇情的な格好をしているのだが…不思議と下品には見えず、寧ろ長身の彼女には似合っているとも言える
だがどう記憶を遡っても見たこともないその衣装からはどこか歴史を感じさせるものがあった。
マチルダは寝起きの頭で必死に彼女が誰かということを考えていたが、ようやく答えが出たので口を開いた。
「…あ、えっと…お客様ですか?すみません。緊急じゃなければ営業はまだなので」
『何を寝ぼけた事を言っておるのじゃ童。ワシは客ではないぞ。貴様がその左手に嵌めているその指輪、元々はワシが持っていたものじゃ。それだけ言われれば、もうワシが誰か分かるじゃろ?』
目の前の女性は、得意げにフフンと鼻を鳴らすのだが…ただいま絶賛施行放棄中のマチルダは、いまいち思い当たる節がなかったらしく、しばらくの間沈黙していたがやがて思いついたように
「………。あぁ、指輪の持ち主さんだったんですね。すみません、知り合いが祖父から預かったとか言っていたのでそのまま受け取ってしまい…すぐお返ししますね」
『……は?』
「え?違いましたか?」
『……』
「……」
(何なんだこの沈黙は…)
しばらくの間お互いに気まずい空気が流れてしまい、心当たりのなかったマチルダは何か返答を間違えたか?と恐る恐る彼女の顔を見上げると、完全に虚を突かれてしまっているらしくポカンとした表情を浮かべて固まっていた。
『わ…童。貴様まさかアーネストから何も聞いとらんのか?!ミクリアのガキからも??!
えぇい!何故ワシの新しい依り代はこんなすっとぼけたガキなんじゃぁぁあ!!!』
「っ?!?!」
突然目の前の女性は頭を抱えながら叫びだしてしまい、寝起き状態で尚且つ状況が全く理解できていないマチルダもその声に驚いて身体を軽く跳ねさせると、そのままベッドの上で後ずさった。