HAZAMA―未来を映す水鏡―
しばらくお互いに重い沈黙が続いたが、やがてミクリアは静かに語り始めた
「……。この指輪は、生前…お前の祖父、アーネストから託されていたんだ」
「!?そ、そんなはずは…っ」
ウソに決まっている!と言いかけたが、ミクリアのあまりに真剣な様子に気圧され黙って話を聞くことしか出来なかった。
祖父に託された?そんな見え透いた嘘を吐いて何になる。あの指輪は一族以外の誰かに譲渡される筈が無いのに…。ミクリアの言葉を受け、混乱してしまっているマチルダを見て、彼は再び言葉を詰まらせてしまったが再び何とか口を開く。
先程までのふざけた口調は一切無く、覚悟を決めた眼差しにマチルダも緊張から身を正す
「アーネストは…一族の在り方について葛藤していたんだ。
お前も知っているだろ?昨今の王都を…。今の国王に代わってから直ぐ、強制的に四季族という文化を隅々まで排除してからというもの…確かに皆の生活は、他国の様々な文化のお陰で急速に発展しただろうが、目に見えて治安が悪くなっているのを
今までずっと…我もお前の一族の生業も、神聖な儀式の一つとして扱われていたが、今では忌み嫌われている。 早くに亡くなった先代…いや、お前の父親もそのことでずっと悩んでいた」
「………」
「そんな時だ…アーネストが我に相談してきたのは。このまま自分の代でこの呪われた一族の連鎖を終わらせるべきか…それともこの指輪を孫のお前に受け継がせるべきか。と
…それでそのまま成り行きで、ずっと我に託されていたというわけだ。我も…お前の一族のことは古くから関わりがあるから理解もしているつもりだが、部外者の我もこれ以上は口が出せんからな…ここから先は、お前が選ぶ道だ。
言うならお前は今、中途半端な存在なんだ。一族の力を使って御霊流しという任務はこなしているが、成人しているのに証は持っていない…
証を継承して生業として最後まで全うするのか、いっそ何もかもを全て忘れ、見知らぬ土地で新たな人生を歩むのか…お前の好きに選べ。我はどちらの選択をしてもお前を否定しない…」
「…ミクリアさん…」
ミクリアの口から語られた言葉の数々に、マチルダは心の整理が付かずしばらくの間俯いて黙ってしまっていたが、やがて絞り出すような声で「…少しだけ…考えてみます…」とだけ呟いた。 今はそれを言うだけが精一杯だった
自分の知らない場所で、父親も…祖父も苦悩していたことを教えられ、そして今。重大な選択肢を迫られているというのに…こんな濁すような言葉しか返答できない自分が酷く情けなかった。だが今はこの指輪をどうするのかと考えるだけで、頭がぐちゃぐちゃにかき混ぜられているかのようにひどく混乱してしまい目眩がする…
そんな彼の様子を見て、色々察したミクリアは彼の頭を撫でながら「まぁ困ったことがあったらいつでも遊びにおいでよ。マチボーイ」といつもの調子で言ってくれたので、マチルダもその言葉に安心感を覚えつつ頷いた。
「はい…その時は、また…」
「うん、待ってるよ」
ミクリアは優しく笑うと、玄関まで見送ってくれた。
「……。この指輪は、生前…お前の祖父、アーネストから託されていたんだ」
「!?そ、そんなはずは…っ」
ウソに決まっている!と言いかけたが、ミクリアのあまりに真剣な様子に気圧され黙って話を聞くことしか出来なかった。
祖父に託された?そんな見え透いた嘘を吐いて何になる。あの指輪は一族以外の誰かに譲渡される筈が無いのに…。ミクリアの言葉を受け、混乱してしまっているマチルダを見て、彼は再び言葉を詰まらせてしまったが再び何とか口を開く。
先程までのふざけた口調は一切無く、覚悟を決めた眼差しにマチルダも緊張から身を正す
「アーネストは…一族の在り方について葛藤していたんだ。
お前も知っているだろ?昨今の王都を…。今の国王に代わってから直ぐ、強制的に四季族という文化を隅々まで排除してからというもの…確かに皆の生活は、他国の様々な文化のお陰で急速に発展しただろうが、目に見えて治安が悪くなっているのを
今までずっと…我もお前の一族の生業も、神聖な儀式の一つとして扱われていたが、今では忌み嫌われている。 早くに亡くなった先代…いや、お前の父親もそのことでずっと悩んでいた」
「………」
「そんな時だ…アーネストが我に相談してきたのは。このまま自分の代でこの呪われた一族の連鎖を終わらせるべきか…それともこの指輪を孫のお前に受け継がせるべきか。と
…それでそのまま成り行きで、ずっと我に託されていたというわけだ。我も…お前の一族のことは古くから関わりがあるから理解もしているつもりだが、部外者の我もこれ以上は口が出せんからな…ここから先は、お前が選ぶ道だ。
言うならお前は今、中途半端な存在なんだ。一族の力を使って御霊流しという任務はこなしているが、成人しているのに証は持っていない…
証を継承して生業として最後まで全うするのか、いっそ何もかもを全て忘れ、見知らぬ土地で新たな人生を歩むのか…お前の好きに選べ。我はどちらの選択をしてもお前を否定しない…」
「…ミクリアさん…」
ミクリアの口から語られた言葉の数々に、マチルダは心の整理が付かずしばらくの間俯いて黙ってしまっていたが、やがて絞り出すような声で「…少しだけ…考えてみます…」とだけ呟いた。 今はそれを言うだけが精一杯だった
自分の知らない場所で、父親も…祖父も苦悩していたことを教えられ、そして今。重大な選択肢を迫られているというのに…こんな濁すような言葉しか返答できない自分が酷く情けなかった。だが今はこの指輪をどうするのかと考えるだけで、頭がぐちゃぐちゃにかき混ぜられているかのようにひどく混乱してしまい目眩がする…
そんな彼の様子を見て、色々察したミクリアは彼の頭を撫でながら「まぁ困ったことがあったらいつでも遊びにおいでよ。マチボーイ」といつもの調子で言ってくれたので、マチルダもその言葉に安心感を覚えつつ頷いた。
「はい…その時は、また…」
「うん、待ってるよ」
ミクリアは優しく笑うと、玄関まで見送ってくれた。