HAZAMA―未来を映す水鏡―
「全く…マチボーイは冗談が通じないなぁ。せっかくこのマスクだって今回の雰囲気に合わせて、息苦しいのを我慢して着けてるんだからもう少し優しくしてほしいなぁ?そんなんじゃ女の子にモテないゾ☆」
「…別にモテなくていいです。」
普通に返答したつもりだったのだが、ミクリアにはお見通しだったらしく「そんなに拗ねないでよ」と肩を竦めながら懐から取り出したリボンのついた小袋を手渡してきた。 中には色とりどりのアイシングクッキーが入っていた
「ご機嫌斜めなマチボーイに、ほーらお兄さん手作りのクッキーをあげよう」
「……」
「あれ?要らない?」
「……いります」
マチルダは受け取った袋からクッキーを取り出すと一枚かじってみた。サックとした感触と共にバターの風味が口いっぱい広がり、満足そうに思わず頬が緩んでしまう。 只のクッキーの筈なのだが、心が解れる…そんな気がしたのだ
だがそんな一連の姿をミクリアに全部見られていたことにようやく気付き、慌てて表情を引き締めたがニヤニヤ笑われてしまった…悔しい
(…俺としたことがつい気を緩めてた…)
「ふふふ~ん。やっと表情が落ち着いたようだね。それで?今日は何のご用時かな?」
「…こちらを届けに来ました…」
そう言ってテーブルに出したのは王都に来る道中で買った小さな花束。
マチルダが依頼を受けて御霊流しをした後。残った遺体は全て葬儀屋である彼の元に届けられる仕組みになっている。 別に義務では無いのだが必ずマチルダは最後にここへ立ち寄ると、手向けとして花束を持ってくるのだが…
「マチボーイ…。ミクリアお兄さんがいくら大好きだからって、毎回花束を渡されても困るなぁ~。お兄さんは皆のモノだけど、そんな情熱的に…って!痛たたっ!!だから痛いって!」
「……」
10回に7回はこうやって謎の茶化し方をしてくるだが、今まではあえてツッコミをせず黙ってやり過ごしていたが、今は雰囲気作りのためにとカラスマスクを着けてくれていたので、日頃の思いも上乗せして彼のマスクを引っ張ってやった。
「もぅ!分かったから!ちゃんと真面目になるから!!」
ようやく観念したように反省してくれたのでマスクを離すと、ズレた部分を直してから花束を受け取ると「最後に会っておくかい?」と声を掛けられたので迷うこと無く頷いた。
ミクリアに連れられながら、彼の工房へ戻ると、隅の方に二階へ続くらせん状の階段があるのでソレを上って二階に着くと一番奥の部屋に通された。
(この部屋の雰囲気だけはいつも変わらないな…)
そこは一階のふざけた内装とはガラッと変わり、白を基調とした神聖な空間が広がっており、中央に大きな台がありその上に棺が安置されてあった。
中には数刻前にマチルダが御霊流しをした【リオン=レト】の遺体が納められていた
ミクリアは一階の工房で棺を作る一方で、運ばれてきた遺体を生前と変わらない姿に仕立て埋葬するのが彼の役割。
マチルダ達の一族によって魂が安らかに眠れると言うのならば、肉体も生前と変わらない姿を保って共に眠るべき…ソレが彼の持論らしい。
マチルダ同様に独りよがりな行為かもしれないが、最期は平等であるべきと彼は以前語っていた。
例え事故や事件で酷く損傷した場合であっても、彼は必ず生前の姿へと綺麗に仕立ててしまうのでその技術や手腕は見事としか言い様がない。以前は魔法の様だと云われていた技術も、今では悪魔のようだと揶揄されてしまっている。
だが好き勝手否定し忌み嫌っていても、結局は誰もが手を汚すことに抵抗があるので、必要時にだけは手のひらを簡単に翻してくるのだが…。
「…別にモテなくていいです。」
普通に返答したつもりだったのだが、ミクリアにはお見通しだったらしく「そんなに拗ねないでよ」と肩を竦めながら懐から取り出したリボンのついた小袋を手渡してきた。 中には色とりどりのアイシングクッキーが入っていた
「ご機嫌斜めなマチボーイに、ほーらお兄さん手作りのクッキーをあげよう」
「……」
「あれ?要らない?」
「……いります」
マチルダは受け取った袋からクッキーを取り出すと一枚かじってみた。サックとした感触と共にバターの風味が口いっぱい広がり、満足そうに思わず頬が緩んでしまう。 只のクッキーの筈なのだが、心が解れる…そんな気がしたのだ
だがそんな一連の姿をミクリアに全部見られていたことにようやく気付き、慌てて表情を引き締めたがニヤニヤ笑われてしまった…悔しい
(…俺としたことがつい気を緩めてた…)
「ふふふ~ん。やっと表情が落ち着いたようだね。それで?今日は何のご用時かな?」
「…こちらを届けに来ました…」
そう言ってテーブルに出したのは王都に来る道中で買った小さな花束。
マチルダが依頼を受けて御霊流しをした後。残った遺体は全て葬儀屋である彼の元に届けられる仕組みになっている。 別に義務では無いのだが必ずマチルダは最後にここへ立ち寄ると、手向けとして花束を持ってくるのだが…
「マチボーイ…。ミクリアお兄さんがいくら大好きだからって、毎回花束を渡されても困るなぁ~。お兄さんは皆のモノだけど、そんな情熱的に…って!痛たたっ!!だから痛いって!」
「……」
10回に7回はこうやって謎の茶化し方をしてくるだが、今まではあえてツッコミをせず黙ってやり過ごしていたが、今は雰囲気作りのためにとカラスマスクを着けてくれていたので、日頃の思いも上乗せして彼のマスクを引っ張ってやった。
「もぅ!分かったから!ちゃんと真面目になるから!!」
ようやく観念したように反省してくれたのでマスクを離すと、ズレた部分を直してから花束を受け取ると「最後に会っておくかい?」と声を掛けられたので迷うこと無く頷いた。
ミクリアに連れられながら、彼の工房へ戻ると、隅の方に二階へ続くらせん状の階段があるのでソレを上って二階に着くと一番奥の部屋に通された。
(この部屋の雰囲気だけはいつも変わらないな…)
そこは一階のふざけた内装とはガラッと変わり、白を基調とした神聖な空間が広がっており、中央に大きな台がありその上に棺が安置されてあった。
中には数刻前にマチルダが御霊流しをした【リオン=レト】の遺体が納められていた
ミクリアは一階の工房で棺を作る一方で、運ばれてきた遺体を生前と変わらない姿に仕立て埋葬するのが彼の役割。
マチルダ達の一族によって魂が安らかに眠れると言うのならば、肉体も生前と変わらない姿を保って共に眠るべき…ソレが彼の持論らしい。
マチルダ同様に独りよがりな行為かもしれないが、最期は平等であるべきと彼は以前語っていた。
例え事故や事件で酷く損傷した場合であっても、彼は必ず生前の姿へと綺麗に仕立ててしまうのでその技術や手腕は見事としか言い様がない。以前は魔法の様だと云われていた技術も、今では悪魔のようだと揶揄されてしまっている。
だが好き勝手否定し忌み嫌っていても、結局は誰もが手を汚すことに抵抗があるので、必要時にだけは手のひらを簡単に翻してくるのだが…。