HAZAMA―未来を映す水鏡―

むかしむかし 自然が豊かな国がありました。

王は民を愛し、民もまた王を慕い、その国は長き時を経て独自の文化を築き生活していました。

そして王の隣には「四季族」と呼ばれる魔法に長けた賢者が常に控え、陰ながらも共に国の発展へと尽力してくれていました。

・春は長き眠りより生命が目覚め
・夏は声明を育む雨と共に豊かな知恵を授かり
・秋は豊穣の感謝を捧げ、生命は実りに満たされ
・冬は終わりを迎え生命は眠りにつく

と言い伝えの元。色とりどりの四季を幾重に繰り返しながら、人々は式族のお陰で調和のとれた生活を営み、争いも飢饉にも見舞われることなく平和に暮らしていました。 
人々は四季族へ感謝を捧げるうちに崇拝対象とすることにした彼らは、後世に伝える為にと彼らのためにと教会を建てることにしました

四季族も同じく人々へ感謝を示し、代わりに未来を映すと云われる水鏡で占いをしてくれるようになりました。

その占いは彼らにとって確定した未来。

喜ぶ者もいれば嘆き悲しむ者もいた…それらが日常でありました。だがある日一人の老人が、自分の死期を知りたいと言ったのが始まり。
噂が噂を呼び、自身の死期を知ることを希望する人々が多くなったのでした。

それら日常の光景を、四季族に育てられていた一人の少女は、ある時疑問に思うようになりました。

彼らには豊かな知恵も自身を想ってくれる人も居るのに、終わってしまえばすべて失われる…。仮に自身を覚えてくれている人が居ても、いつかは途絶えてしまう。
豊かな知恵も、今まで紡いだ記憶も、何もかもが失われるのはあまりに無常ではないか。と

それならば自分が代わりに、彼らの記憶を引き継いであげれば仮に誰かに忘れ去られても自分だけが語り継いでいける。そう考えるようになりました。
1/21ページ