― An EvilPurify ―緑の調べは赤の道

急に現れて偶然に出会っただけでうっとおしいぐらいに世話焼いて来て

また出会った時もいちいち世話焼いてきて面倒だった

面倒だから嘘を吐いてやれば簡単に騙されてくれるし扱いやすいバカだと思ったし、Roseのくせにこっちの身内に重傷負わせておいて本気でムカついた

仕方ないから手伝ってやったら、歯の浮くようなセリフ吐いてきたとか思っていたら有言実行しやがったし…散々俺の事振り回しておいて今更どこかに異動とかムカつく

 
 もやもやするクレイの心中を察してか否か不意にクレイの頭に手を置いてぐりぐりと撫で回してきた
「さて、そろそろ帰ろうか。でもさー、色々あって出会ったのにもう異動ってなんか寂しいな」
「っ…。」
「そういう決まりだから仕方ないだろう」
そう言われてしまうと元も子も無いが、三人は医務室を退出しエントランスを目指して歩く。 昨日のうちに停めておいた馬車を取りに戻り二人を乗せて城下町へ走らせる
馬車の中でもアキは普段通りワイワイと話しかけて来るが彼は返答する気も起きないのか窓の景色をぼんやりと眺め続けていた

「城下町に到着だな…家まで送るから案内を頼む」
「近いから良いよここまでで」
扉を開けて外へと飛び出す
「またね Roseのおにーさんたち」
「あ、クレイ君!…あー…行っちゃった……まだバイバイまたね って言ってないのに…」
「“さよなら”と言うとどこか別れを彷彿とさせるが…君もそう思うのであればまた会えるんじゃないか?」
リオンの言葉の意味を理解したらしく、安堵の表情を浮かべたアキは うん。と返事を返す
 町は昨日に比べて人が溢れ、ジュナル発行の号外が次々と配られていた
「最近は人通り少なかったけど賑わっててよかったな…なぁ、さっさと馬車おいて俺らも号外貰って新聞買いに行こうぜ!」
「あぁ、勿論だ」
入り口付近で止まっていた馬車を再び動かし、自宅へと戻って行く。


 二人と別れて人ごみに紛れたクレイは号外を受け取って何となくジュナルの前を通ってみると、窓の向こうに初老の男性と話しているルアルの姿が見えた。
(俺が渡した情報。案外ちゃんと使いこなせたんだなアイツ)
だからと言って図々しく自分が情報提供者です!と乗り込んで行くつもりは毛頭ないので立ち去ろうとすると不意に窓の向こうの彼女と目が合い、逃げる間もなく捕まってしまった…
クレイさん~!!探していたんですよ!
「俺は探してないから放してくんない?」
 がっちりと両手を掴んで握手をされていたが軽い怒りを込めて言い返すと慌てて放してくれた
昨日ですね!何とクレイさんの双子の妹 クレアさんがクレイさんの代わりにコレを届けてくださったから大手柄なんですよ私~!!
(うっさいなぁ…ってかコイツまだそんな事信じてるって相当なバカなんだな…)
「も~クレイさんも水臭いですね~あんなに可愛い妹さんがいるなら、教えて下さったら良いのに…是非ともお二人招いてお礼しますから~!!」
「…アッハハ★君ってつくづくオメデタイ頭なんだね 俺にきょうだいなんて…」

そこで言葉を切る。
思い当たるのはちゃんといる…だが

「居ないよ?」
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