― An EvilPurify ―緑の調べは赤の道

 翌日。時間も遅いからと支部に泊まらされる羽目になってしまったクレイは、アキ達と共に朝から医務室にいた
「これぐらい平気なんだけどなぁ」
昨日のどこかで掠ったらしく腕には切り傷が出来ており、止血しているが念のためにと消毒と包帯が巻かれる
「油断していると痣になるからな」
「やっさし~支部長。俺らにだったらきっと ツバ付けとけば治るとか言いそうなのに」
「いや、お前らの場合は何もしなくても勝手に治るだろう 多少痕が残ろうがどうだっていい」
吐き捨てる様にかえされ、めそめそとリオンに泣きつく

「ですが支部長。彼の処置を直々にされるのは解りますが、大丈夫なのですか?」
昨日のリアードの件やカンナの件を言っているのだろう。と察し手袋を付けた手を見せる
「俺は相手のプライベートを好き勝手見る趣味は無い。まぁお前らみたいなRoseの犬は別だが…だから自衛も兼ねてコレを付けている」
(一般市民との扱いが雲泥の差だ…)
「時に支部長。あの後は夜通し取り調べをしたとお聞きしましたが結果はいかほどに?」

「あぁ、恐らく今は薬物の後遺症で飛んでるだろうな 見えた動機は至極身勝手なモノで…まぁ最初の頃は新しいおもちゃを手に入れたから使ってみたい。と言う心理に近いな 最初の興味はその辺の的。次は動くモノ…で、いつしか的は人に代わった
 で、ある時初めて殺人を犯した時に新聞に載った。捕まるかもしれない恐怖と自分は世間に注目されたと思いこむ快感。 だが模倣犯も現れた事でこれは自分がやったんだ もっと注目を…と考えて少ない知能で考えたのが、殺害後の血文字だ 

Vanessa(ヴァネッサ)Ishuana(イシュアーナ)でVa。Ish。そして狙っていた奴の名はCheryl(シェリル)とClaire(クレア)一見すると何も無さそうだが奴がやりたかったのは、Ishvarie(イシュヴァリエ)つまりこの国名だ。 もしこの法則を見つける奴がいて騒いでもらうのが目的だったと言う訳だ 確認せず殺った犠牲者も何人か居たみたいだが…」
「?でも支部長。他にリオンの家の裏にも書いてありましたけど名前の一部じゃなかったですよね??あの方は…」
 何気なく問われたアキの言葉に心当たりが大いにあるクレイは動揺を隠すべく目を閉じておく
「エルマー=アンドリッシュだったな。彼女もそうだが、報告にある中には出身おいても全て不明の奴が複数人居たな… 今の所。記憶を探ってても見当たらないが、問題は無い。流石にここまで世間を騒がせておいた奴には全てを背負って消えて貰うだけだ」

クレイの治療も終え、道具を棚に戻したエトワルは脱いでいたコートを羽織ったが、ふと思い出したように派遣部隊の二人へ向き直る
「こちらでの異動期限は明日までだったな。正式な異動場所に関しては近い内に連絡する。以上だ 今回の件はよくやったな」

もしかしたら初めて聞くかもしれないエトワルからの称賛の言葉ではあったが二人は敬礼をする。
 医務室よりエトワルが退出し、二人は肩の力を抜く
「色々あって忘れてたけど、ここに居られるの明日までだったんだなー…次どこだろう?」
「出来るなら黒か白は止めて欲しいな…治安が悪いのと息が詰まるのは面倒だ」
 手慣れた様子で会話していたが、それを聞いていたクレイは無意識で彼らを見つめていた。
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