― An EvilPurify ―緑の調べは赤の道

アキ達はともかく、エトワルやリュミエールは目立ってしまうため上からコートなどを羽織っておいた。
さっさと行くぞ。その言葉を合図に皆はエントランスへと向かって行き、リュミエールの用意した馬車へ乗り込む
 馬車での移動中。軽い雑談をしては居たが、そもそも参加する気が無いらしいエトワルは眠そうに窓の外の景色を眺める
馬車で揺られる事数十分。城下町の入口へと到着し、馬車の中にルアルから受け取っていたカメラを残し石造りの地面に足を付ける

(ローファーだし案外違和感ないな)
数回足踏みをして足元の間隔を確かめている間。リュミエールは少し離れた所に馬車を駐車してから合流した

「クレイ…だったな。服に盗聴器を付けてあるから音声は全員が拾えるようにしてある」
「うん、ちゃんとエトワル様の音声が聞こえたのでばっちりです!!」
「へえ~流石Roseの全力バックアップだね」
心にもない褒め言葉を言っておいた

「じゃあ路地裏でも歩くとするよ」
その言葉に全員が持ち場に付くべく移動を開始した。 表通りで電話をする風に待機したり屋根から偵察したり近い通りに潜んだりした
(あの声かけで直ぐに皆消えていったな…)
 過去にあった出来事の影響と現在は自称王様の警備員でもある為。人一倍人の気配や殺気には敏感だと自負していたが、それでも感じ取れない
(気配とか俺でも感じ取れないなんて…)
さっきまであんなにワイワイ騒いでて頼りなさそうに見えていたが、今はそうでもない
(案外さっき言ってたのは伊達じゃないのかもな…)
着替え終えた自分の前で跪いて宣言したあの言葉をふと思い出し、自然と目を細める

 宛てもなくただ路地を歩いていると数人の人とすれ違った際に、時折振り返ったりしてきたが特にどうという事も無く時間が過ぎる
(案外物好きって引っかからないんだな……まぁ、ルアルの時もそうだったけど現場を見られたり色々されてるせいか、手荒になってるって聞いたからなぁ…)
ふとそこで立ち止まる
(俺も人の事言えないけど、もっとスマートにやったら良いのに…なーんて あっははは★素人のやることってホント訳わかんない)
内心で毒づき再び歩き出す

(釣れないしちょっと遊んでやるか)
ただ普通に歩きまわるだけでは相手も警戒して近寄っては来ない気がし、歩き方をスキップ交じりにしてみたりくるんとその場で回転してみた際に、わざとハンカチを落としておき気付かないふりして立ち去る
 クレアが立ち去って間もなく、黒い髪とこの時期には珍しい厚手のコートを羽織った長身の青年が落としたハンカチを拾い上げ、後を追いかけた
「あ、あの…お嬢さん」
「はい?」
「こちら落としましたよ? …もしかして御一人なんですか?」
「あら、ありがとう …えぇ、そうですの。さっき彼にフラれちゃって…」
「それは酷い彼ですね…お名前を窺っても?」
「クレアですわ」
その場でお得意の嘘を吐いてはみたが、自分の手の上で踊らされている姿が愉快で仕方がない
50/56ページ
スキ