― An EvilPurify ―緑の調べは赤の道

普段と同じく遅い朝を迎えたクレイは城内がやや騒がしい事に違和感を覚えた
(昨日はエッくん達がうるさかったからさりげなーくナナシの所に行っててバレない様に帰って来たのに…もしかしてバレた?…にしてはおかしいし…)
さてどうしたものか…と情報収集すべく廊下を歩いていると行き止まりになっている廊下の最奥でシーラとレーンの二人が何かを話している様だったが、この距離からは内容が聞こえない
(内緒話。ではなさそうだなぁ)
直感的に面白そうなことが起きている。そう感じ取ったクレイは軽い足取りで二人の元へ近寄る

「こんなところで二人っきりでいるなんてどうしたの?もしかして秘密の逢瀬?」
「何でそうなるんだ…はぁ…悪いが今はツッコミ入れる元気も出ないんだ」
「じゃあ僕はもう行くね~?」
「だから待てシーラ!お前一人勝手に行動したところで何になる!」
 クレイが来たのでこの隙に。と移動しようとしたシーラだったが、話はまだ終わっていないと言わんばかりに腕を掴むと殺意の秘めた目で一瞬彼を睨む
「…放してよレーン…」
普段のふわっとした口調を微塵も感じさせ無い冷徹な声で言い返すがその手が緩むことはない
「落ち着きなよシーラ で、何かあったの?」
「…あぁそうか その場に居なかったからクレイは知らなかったな……昨日、サンとシェリルが城下町で襲撃された。…その後Roseに保護されてて今朝帰ってきた 今は医務室だがまだ目覚める気配がないんだ」
 
レーンの言葉に一瞬耳を疑った。また城下町で事件が起きた それは今はどうだって良い。自分にとって町の誰かが犠牲になろうが気にする気は無い…が、自分の近いところの者が犠牲になったと聞いてクレイの表情からも余裕が無くなる
「今まではRoseが解決してくれるとばかりで安心してたけど…今回ばかりは黙ってられないんだよね」
いつものようにニコリと笑っては見せるが彼にも余裕が無いのか目は笑っていない
「一昨日は君たち行きつけのお店の人が襲撃されたんだっけ? ホント困るよね~…あんまり好き勝手荒らされるのってさぁ…」
 これ以上は聞いても仕方ないだろう。と二人から距離をとって廊下を歩いていたが不意に立ち止まり振り返る
「あ、そうそう 痴話喧嘩はほどほどにしなよ~?噂好きなメイド達に見つかったらネタにされるよ?」
最後にわざと茶化してやってから足早に立ち去り、しばらく歩み続けてようやく誰もいない廊下に到着して壁にもたれかかる

(犯人がどう言うつもりで襲撃してるのかなんて微塵も興味は無い。…けど、ラガーをこれ以上困らせてくれるのは気に入らないなぁ 困らせて良いのは俺だけなんだし)
さて…。とその場で大きく伸びをしたクレイはいつものルートで誰にも見つかることなく城下町へと繰り出した。 きっと今の状況でラガー達に会いに行こうものなら確実に外出禁止を命じられると分かっていたからだ。 …と言え、仮に命じられても聞くつもりは毛頭無いが
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