― An EvilPurify ―緑の調べは赤の道

 医務室に到着すると一部分カーテンが閉じられているベッド以外誰もおらず、番を任されたのだろうがリュミエールもついうたた寝をする姿があった
(他に誰も居ないのは良いけど…大丈夫かな?;)
比較的物音は立てないようにしながら一歩入室すると、彼女の指がピクリと動き瞬く間にアキに向けてワイヤーが放てる手甲を向けたが、きょとんとした様に腕を降ろす
「あれあれ?アルバトロさんどうしました~?」
「∑ぅあー…びっくりした…いや、俺はお見舞いに…ってかリュミちゃん寝てたんじゃ…?」
「エトワル様の側近たるもの、いつでも気を抜くな ですよ☆」
得意気に話してくれる彼女の言い分に苦笑いを返すしかなかったが、面会を許可してくれた
「何かあればお呼びくださいです~私はこの場で今日は待機ですので」
「うん、ありがとう」

背後のカーテンが閉められ、改めて視線を向けると、顔色はあまり良くないが先程の時とは違う落ち着いた呼吸で休んでいた。
「過去の事。軽く支部長から聞いたけど…折角忘れてたのに怖かったよな…」
語り掛けた所で返答がないのは重々承知している。それでも続けた
「こんなに怖い思いさせておいて言える立場じゃないけどさ…君は生きててくれてよかった……守れなかったのが沢山あったからさ」
 自分が囮調査した時の件が脳裏に浮かぶ

「もう繰り返したくないもんな…」

自分にも言い聞かせる様に言うと、再びうたた寝を開始しようとして居たリュミエールへ合図を送ってからその場を後にした。



―――――
 翌日の早朝。リュミエールには御者を任せ、エトワル自らシェリルとサンをイシュヴァリエへ送り届けた エントランスでは国王のラガーが直々に出迎え背後にはシーラとレーンが控えた
(アレは確か…ああ記憶で見た奴らか)
「姉上の従者を保護してくれた事 感謝する」
「勿体ないお言葉です陛下」
心にもない言葉を吐く自分に反吐が出そうになるのを堪えて恭しく一礼し、リュミエールに二人をご案内する様に命じたが、それは制止されてしまう
「ここから先は二人に任させて頂く」
 視線を少しばかり下げて背後に控えさせたレーンに向けると、シーラと共に馬車へと向かい二人を引き取った

「有能な部下が保護してくれたといえ、特にファレナ様の方は怪我をされていたのでこちらで処置をさせて頂いております」
しがみついてくるシェリルを宥めながらシーラの方へ視線を向けると彼女の袖の隙間から包帯が見え隠れした。 一瞬は戸惑ったが直ぐに二人を城内へ運んで行った
「我々も近頃の事件には心痛の思いだ…特に姉上はこの一件で大層心を痛められていたが…従者が無事だったのは有能な部下を持つRoseのお陰であろうな」
 彼らを見送ってからあえての言葉を口にするが、エトワルは特に表情も変えず愛想笑いを返し
「親愛なる我らが陛下の心痛が和らぐように一層努力致しますと共に…近い内に良きご報告が出来る事をお約束しましょう」

再び恭しく一礼すると馬車へと乗り込んで城を後にする
帰りの道中馬車に揺られながら取り繕っていた笑みの仮面を外し、苦々しい表情で馬車の窓を叩く
(クソッ…まさかトップ直々に来やがるとは…だがまぁ…アイツの頭から面白い情報は見れたから我慢してやるとしよう)
42/56ページ
スキ