― An EvilPurify ―緑の調べは赤の道

 表通りに近い場所に居た二人の元へ合流すると連絡を終えたリオンと隣で小刻みに身体を震わせるサンの姿があった 
「悪い…逃がしちゃった…;」
「いや、大丈夫だ…それより」
一旦言葉を切るとうわ言を呟き続ける彼女の方へ視線を向ける
やだ…怖い……あかいの怖い師匠どこにいるの?…しーら…れーんも……
 怪我の部位からは既に血が止まっている様ではあったが応急処置をしようとしても、酷く怯えたままで何も出来なかった事を説明し

「支部の方には連絡したから、直ぐに来てはくれるだろうが…それに、無事を伝えても良いが今のままではさっきの兎の耳を付けた子にも会わせられないな…」
「あーあの子な 今どこに?」
「ローゼに預けておいた」

 他に預ける相手いなかったんだろうか…と思ったがそこはツッコミを入れない様にした

「……。えっと…サン…ちゃんだっけ?悪いけど怪我の部分見せてね」
そう声を掛けてアキが彼女の腕を持って怪我の具合を見ようと伸ばした途端。自身の血で染まっていた手が視界の端に映り
ひっ!やっ…やぁあああっ!!
再びつんざく様な悲鳴を上げてその場から必死に逃げようと手を払い動こうとするが足が思うように動かない
「お、おい落ち着け!」
「サンちゃん大丈夫…大丈夫だから!もう誰も…痛い事しない もう怖くないから!」
 再びトラウマが呼び起こされ逃げ出そうともがく彼女をしっかりと抱き留め、子供をあやす様に背中をさすり声を掛け続ける
「ひっ…ぐ……?え、く?」
 次第に落ち着きを取り戻し、涙で濡れて歪む視界のままに顔を上げるとアキの顔があったのだが、明かりが少なく薄暗い事もあり緑の髪は夜の闇の様に黒く見え、赤い瞳は知り合いの彼と似ていた為。ああ、エクが来てくれたのか…と安堵し途端に意識を失った

「落ち着いた…のか?」
「気絶しちゃったみたいだけどね…今の間に傷口だけでも応急処置しておこう」
スカーフなどで特に傷口が酷い所を包んでから抱きかかえて表通りに戻ると、とりあえずは開通した道の前で既にリュミエールの二頭立て馬車が到着していた
「救援とお聞きして来てまっ…!だだ大丈夫ですか?!」
「サン!」
 同時に駆けよってきた二人にはリオンから簡易的な説明がされ、その間に彼女を馬車の中に運び込む。
「サン…大丈夫なの?」
「気絶しているだけだ。…それより遅いから君も支部に来てもらう 時間も遅いが、さっきの奴に関してを少し聞きたいからな」
「ではでは、超特急で支部まで戻りますよ~!!」
皆が乗り込んだことを確認すると、元来た道を大急ぎで戻って行った。
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