― An EvilPurify ―緑の調べは赤の道

屋敷から城下町までは一本道だが周囲は雑木林が広がっており、風によって揺れる木々が二人を少し不安にさせる
普段と同じ光景であるはずなのだが、ここ最近に起こっている事件を嫌でも意識してしまうので二人は手を繋いで歩きお互いに他愛もない話を交わし合った
「昨日は久しぶりにレニのお家で泊まれて楽しかったね~ 大勢だったからちょっと狭かったけど…でも懐かしかったね」
「師匠の部屋で泊まるなんて子供の時以来だっけ」
「うんうん!あの時もあったかくて楽しかったな~」
当時の事を思い出したのか、手を繋いだままぴょんぴょんと跳ねて歩くシェリルについ引っ張られ苦笑いする

そうこうしているうちに城下町へ付近と到着したものの…

「何だか騒がしいね…」
「何かあったのかな~?」
時刻的にはそろそろ昼間の様な賑やかさは無い筈なのに、珍しく随分と騒がしく感じられる もしかして事件でも起きたのだろうか?そう思って近寄ろうとすると
「あーお嬢さんたちごめんね!こっから先は今馬車が横転しちゃってるから通行止めなんだ;」
「えっ馬車が…?」
そのまま真っ直ぐ行けば帰れるのだが、数刻前に馬車同士が衝突して転倒して以降通行止めになっているとの事だった
「真っ直ぐ行けたら近かったのにね…」
「悪いねー;もう少し待ってくれたら通れるとは思うんだけど…おーいリオン!後どれぐらいかかりそうだ?」
「無理を言うなアキ 建物も一部破壊しているから簡単には動かせないんだ」

連続殺人事件の今日のまとめを終わらせて自宅で休憩していたアキ達だったが、急遽起きた事故の処理も上からの指示でさせられていた
 衝突の影響で損壊している馬車をローゼが変形させた腕で何とかどかそうと努力をしてくれてはいるのだが、他の建物にもぶつかっているせいで中々進まない
(重たいしやる気で無くなってきた…)
「サボるな」

(あの様子じゃまだまだ掛かりそう…)
このまま悩んでいても余計に遅くなりそうと思い、仕方がないので裏通りから帰ることをシェリルに提案した
「え、裏通り通るのかい?んー…お嬢さんが二人で通るのはあんまり気が進まないし…途中までなら俺が送ろうか?あ、俺Roseなんだけど」
 金時計で紹介はしてみたが、人見知りな事と元々慣れている町だからという事もあり、アキからの申し出はお断りして裏通りへと入って行った
表通りに比べて照明の光は途端に少なくなり、所々に詰まれた木箱でつまづきそうにもなった

「昼間の時しか来ないから歩くの結構難しいね…この辺の石畳歩きにくいから気をつけてねシェリル」
「うん 大丈夫」
時々ジャンプで木箱を避けたりしながら進んでいると、十字路に差し掛かった辺りでふとシェリルが足を止めて黒く長い自慢の兎耳をしきりに動かした
「?どうしたのシェリル」
「んー…分かんない…けど何だか変な音がした気がするの…」
 音の距離やモノが何かは分からなかったが、落ち着かないのか垂らした耳を何度も擦った。
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