― An EvilPurify ―緑の調べは赤の道

淑女としてのレッスンがクロアの手によって一通り行われた後。服の裏に盗聴器を仕掛けておき、今回は自分も動く。との事でエトワルからの直接の指示が受けられるようにと耳の片方にイヤホンを付けさせておいた。
支部を完全に空けるのは心もとないから。と今回はリュミエールを支部に待機させて代わりに派遣部隊の二人を連れて夜の城下町へと馬車で移動していった。

「何かあれば指示は俺が送る。それまでは自由に動け 周囲にはこいつら二人を付けておくからまぁ特に安全面は大丈夫だろう」
『か、かしこまりました…;』
「俺ら二人を付けるのは構いませんが…支部長は単独でも大丈夫なんですか…?」
「護身用に銃はある。だから気にするな」
自分は良いからさっさと行け。と手で追い払うような仕草をして彼らに行動をさせた
「何かあれば声出して呼んでくれよ」
『ありがとう…ございます…』

不安と後悔と羞恥等々が入り交じりながら、絞り出すようにして返答しグレコはおぼつかない足取りで石畳になっている通りをゆっくりと歩き出す
(うぅ…歩きにくい……)
 先程までレッスンを受けていた場所が普通の足場だった為にそこまで苦戦はしなかったが、今はうっかりと気を抜くとヒールのかかと部分が石畳の溝に引っかかって転倒や靴が脱げそうにもなるので一瞬でも気が抜けない
一応は守って貰っているという安心感はあるものの、常時エトワルから指示が送られるので気が気じゃない

【おい!なんだその歩き方はっ!さっきレッスンを受けた筈だろう?!真面目にやれ!!】
(怖いよぉぉ…)
イヤホンから聞こえる怒鳴り声に怯えつつ、全力で背筋を伸ばし歩を進める。



 彼らが捜査を始めた通りから少し離れた場所にあるエンプレス街路地裏では、“一仕事”を終えたクレイが胸元を真っ赤に染めた姿で足元に倒れる女性を見下ろしながらホルダーに入れていた紙を眺めた
「ほんっとに嫌になっちゃうなぁ。毎回毎回俺の友達の周りを嗅ぎ回るアンタらが悪いんだよ? まぁ、悪いのは俺じゃなくって君らを雇った奴と…運の悪さだね」
完全に片付けてあるのでクレイの言葉は聞こえていないのは解っていたがわざと声に出してそう告げる
「あーあ…また汚れちゃったなぁ……ったく、俺は一応ラガー達から帯刀禁止言われてるんだけど…君らのせいで俺ってば言い付け守らない不良じゃないか」
半ば八つ当たりめいた言葉を放ちながら適当に服に付いた汚れを払い、立ち去ろうとした所でふとルアルが言っていた事を思い出す
(そう言えば最近…壁に名前が書いてあるとかなんとか言ってた気がする…)
地面に流れる血を適当に指先で掬い、壁に彼女の名「エルマー=アンドリッシュ」の“Elmer”部分だけを壁に適当に書いておき表通りへと出る

(ここからどうしようかな?普通に帰っても良いけど警備の兵士増えるとかライムが言ってたし…)
やれやれ…と呟きながらどうしようか?と迷っていると近くの通りから微かに怒鳴るような声が聞こえ、好奇心のままにそちらへと寄ってみるとよろよろとしんどそうな足取りで通りを歩く金髪の女性?と少し離れた所を歩くアキの姿が見えた
(え…何あれ…?Rose一体何のイベントやってんの??)
好奇心のまま普段の様に話しかけてみたかったが、何だか近付いてはいけない雰囲気を察し、人目を避ける様にして一旦はナナシの元へ向かう事にした。
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