― An EvilPurify ―緑の調べは赤の道

特に何もする事無く静寂が続く中。足をパタつかせていると、少し離れた通りで女性の甲高い悲鳴が周囲に響き渡る
「っ!?なんだ?!…二人とも!聞こえたと思うけど俺は今すぐ現場に向かう!!場所は噴水広場から右に向かった辺りだと思う」
少し声を張り上げて報告を行い、一足先にアコは現場へと向かう

「ぅわっ?!!」
現場へと着くとそこは地面や壁に前回同様に鮮血がまるで海の様に広がり飛び散っていた。その中央には鋭利な刃物で胸部を大きく斬り裂かれたと思われる女性が横たわっており、アコを背にするようにして誰かが片膝を付いて何かをしていたが、彼女の姿を見た途端に大急ぎで逃げ出した。
「あ、待てっ!」
追いかけようとしたが現場を放置する訳にも行かないので二人へ場所の指示を送ると、少ししてから一本隣の通りから二人の声が聞こえた。後は任せて大丈夫だろう、と表情を歪めながら一足先に調査を開始する


二人で犯人を追う中。少しでも妨害しようと周囲の木箱を崩したり、物を投げたりと犯人は必死に抵抗をした
「随分手を煩わせてくれる…っ!」
避けてはいるがそれらの妨害で犯人を見失い始めているのは確かだったので、無傷で捕らえるのは止めようと思い、ローゼを投げたのも束の間
「この距離なら…捕らえて見せ…∑きゃぁあ?!退いて下さいぃい!!
「∑うわぁっ?!」
 犯人を無傷で捕らえようと考える彼女と、多少ボコっても構わないと考える彼の思考不一致により、お互いに自身の射程距離内に入った事で武器を使ったに過ぎないのだが…
誰が自分を捕らえろと言ったっ!!
ごごごめんなさいぃいっ!今すぐ解きます!あぁ犯人がっ!!」
リュミエールが放った鋼鉄製の網の中に誤ってリオンが捕獲されてしまったのだった。
(んぎぎぎ…あー…ダメこれ。私の力でも開かないわ)
自力で彼の元まで戻り、赤紫の腕で引き裂こうと努力はしてみるが傷一つ付かず断念してしまう
「はぁぁぁ…」
「ごめんなさい……ひっぐ…こんな事に、うぇぇぇっ。なる、なんて…」
「泣かなくて良いからまずはさっさと出してくれ;」
 鼻先を赤くしながら泣いてしまっている彼女を適当になだめながら何とか捕獲用の網から出して貰う

「ようやく出られた…ほら、君は医療班や回収班を呼んでくるんだ。自分はアキと現場の調査に行っておくから」
「はーい…」
肩を軽く叩いてから表通りへと送り出し、ローゼはそのままに引きずって移動した
「ああ、リオン…犯人は?」
「悪い取り逃がした。…色々あってな…」
「そっか…それよりこの子なんだけど…俺が叫び声聞いてから来た時に、犯人が座っててそれで直ぐに確認したけど彼女もう手遅れだった…鞄は置いてあったから悪いけど探らせて貰ったら「イシュアーナ=クラベル」って子で…16歳だったんだ」
「まだ若いな…」
「うん…俺がもうちょっと頑張って調査してればよかったな…って思う。」
「あまり自分を責めるな。君のせいじゃない」
(ねぇコレ…)
 あまりの凄惨な状況にナイーブになるアコの肩に手を乗せていると、前回の殺害現場と同様に飛び散った血に交じり“Ish”とも読める文字が書かれてあった。
「前回は確か“va”…だったな。はぁ…犯人の考えていることは分からん」
そう呟き、現場を到着した回収班や医療班に任せてから二人はリュミエールの馬車に乗り込んで支部へと帰宅した。
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