― An EvilPurify ―緑の調べは赤の道

「今回俺たちも来たばっかりだから良く調べられてないんだけど、旅行客の子みたいでね…死因は刺殺で前にあった事件4件覚えてるかな?それによく似てるって」
「ふむふむ…!」
 熱心に記事をメモしていると、少し離れた所からやや疲れた様子でローゼと現場を調べていたリオンが注意する
「おいアキ。あまり軽々しく情報を流すな…」
「だってこの子クレイ君の友達だって言うからさ、応援してあげたくなるだろ普通!」
「疑い知らずなのは君の良い所だけど今回だけでも疑ってくれ…」

 力説で返す彼により疲れを感じつつ、捜査をしていると酷く血痕が残っている壁の際部分にべっとりと血で汚れたメスが落ちていた。
「使用したのはコレっぽいな…」
回収班に証拠として渡しておくと、ローゼがメスを拾ったあたりの壁をじっと見つめていた
「?どうした」
(これ…この周りは斬ったからの汚れみたいだけどさ、ここだけなんかおかしくない?)
彼女が指摘する部分を見ると、飛沫に紛れて小さく“va”と書かれているようにも見えた。
「…さっぱりわからんな」
見つけてはみたものの、その文字が何を意味しているのか分からず彼はそれ以上気に留めず、とりあえずアキにも伝えておくとそのままルアルに流されてしまった。何てことを…
気が付くと日も陰ってきたのでそろそろ支部に向かおうとアキに声を掛けローゼを棺桶内へ戻した

「取材への協力!ありがとうございました!!」
「おう!頑張ってなー!」
ルアルと別れたのも束の間。二人はこの後の事を再び思い出し肩を落とす
「怖いな…本当に……なぁリオン 他になんか手土産になりそうな情報あったか?」
「さっきも伝えたが犯人が使ったであろうメスと……一部が文字に見えるかも?と言う情報ぐらいだが…」
「…」
「…」
これ以上お互いに口を開いたら余計に不安になる事を言いかねないと悟り、それ以降は無言で支部へと向かった。

予定時刻より少し早い目に到着した二人は、意を決して扉をノックする。中からリュミエールらしき人物のどこか抜けたような声で返事が聞こえ、数分の後に開けてくれた
「お待ちしておりました~ささ、どうぞ」
「お邪魔シマース…ってえ??」
青ざめた表情で入室したのも束の間。二人の眼の前には、まだ準備段階とはいえこの間の様にパーテンションやハンガーラックが再び揃えられており、クロアとコクレイがわいわいと盛り上がりながらテーブルの上にアクセサリーを並べていた。
 呆然と立ちすくんでいるとその背後で扉が開き、少し席を外していたエトワルが遅れて入室した。が、眼の前の光景に集中していたため気付いていない様子だったので、彼はわざと扉を大きく音を立てて閉めた
「「∑?!!」」
ビクッと身体を震わせ、二人が瞬時に後ろを向くとエトワルは愉快そうに笑みながら余裕の足取りで愛用の椅子へ腰かけ、机の上に巨大な注射器と銃を一丁置き
「さて…貴様らはまず俺に何か言う事は無いのか?そうだな…隊長であるお前が言ってみろ。」
ごめんなさい!うっかり羽伸ばし言ってました!!何でもしますっ!
即座に謝罪するアキの言葉に口元を歪めて嗤った。本当に軽く脅すだけで簡単に転ぶ奴だ…と

「ふん。まぁいい…さて…貴様らも知っている通り、また事件が起きた。それも被害者は女性だ…折角羽伸ばしに行ってリラックスしてくれていたんだ。帰ってきたらすぐに行ける様にと俺が代わりに用意しておいた。 どっちがやるんだ?ん?」
異様に優しいトーンと笑顔で語りかけられている筈なのに二人には「テメェらがサボったから事件が再び起きたんじゃねぇか。詫びとして何でもやるといったんだから女装でも何でもしてさっさと犯人捕まえてこい。役立たずども」と言われている様にしか聞こえず、咄嗟にアキはリオンへ視線を向けるがそれよりも先に彼は視線を逸らした。
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