― An EvilPurify ―緑の調べは赤の道

同日。アキ達は完成した報告書提出のためにとGreen Roseの支部長室へ呼ばれていた。昨日まであった衣装やパーテンションなどのセットはいつの間にか撤去されてあり、跡形も残っていなかった
「今回はお手柄だったな」
珍しくエトワルから労いの言葉を掛けられ、嬉しそうにアキは笑みを浮かべる
「協力してくれたクロア達もですけどやっぱリンコちゃんのお陰ですね~ 何たって可愛かっ(放たれる平手打ち)∑っで?!」
 最後に不用意な一言を言ってしまい、それを思い出したリオンは耳まで赤くなりながら次にアキの頭を張り倒し、押しのける様にして一歩前に出て疑問を口にした

「無事に逮捕できたのは何よりですが…彼が連続殺人犯。と言う事でよろしかったのですか?」
「随分な質問だな。…だが、能力で記憶を覗いたところ、アイツにはこの間の被害者「ケーラ=シザリオ」とお前の時の記憶以外、ほかの被害者に対する記憶が見つからなかった」
腰掛けている椅子に深く身を預けながら大きく溜息を吐く
「俺のこの能力に間違いや衰えがある訳無いからな…通常状態と、俺の“もてなし”で記憶や心を読んでやったが見つからない」
「昨日よりエトワル様が何度も行われているのですが今仰られた通りでして…」
「この先。アイツにはまだ少しばかり俺の“もてなし”には付き合わせるつもり。だが…他に犯人が居るかもしれない可能性が残っているからな 貴様らはまだしばらく野外として動け。必要があればこちらから連絡する。以上だ」

一方的に話が打ち切られ、それ以上の質問なども出来ぬままに彼らは支部長室を後にした

―廊下―

「あーあ…俺らまだ野外部隊扱いかぁ……」
「昨日逮捕された彼。危険かもしれないね…」
「?あの支部長に全部覗かれちゃうから??」
考えていたこととは違う答えが返ってきたが、ある意味で納得する
「確かにそれもあるだろうけど…そうじゃなくってあの支部長のもてなしがだよ。気付かなかったのかい?彼から麻薬作用とかがある薬草の匂いがしていたのを…」
 それを当たり前のように話した所でハッと気づくが、アキは困惑したように首を横に振って否定する。

「…悪いアキ。説明不足だったな 薬草扱っているから分かるんだろうけど…僅かにね。そうだなぁ…自分が扱ってるのは基本。傷薬とかに扱えるごく一般的なものだよ。まぁたまに頼まれて調剤もやってるけど 彼の場合はおそらくどそれらを使った尋問って所だろうね実物が何か分からないから中毒性とかにはアレコレ言えないけど…それらの薬草ってのは特有の甘い匂いがするんだ」

「へぇ~…やっぱその辺は詳しいよなー。じゃあさ、甘いってのはお菓子とかそういうのか?」
「うーん…個人で意見が変わるから例えにくいな…自分は砂糖菓子っぽいと思ってる」
専門分野の一部分を教えてもらい嬉しそうにちょっと軽い足取りになったが、それを聞いたうえで犯人に同情もする
「そう考えたらさ…大丈夫かな?あのひと」
「さぁね。こうなったのは自業自得ってやつだ 君がそこまで気にする必要はないよ。…さて、どうしようか?」
「そっかな…あ、じゃあ久しぶりにヴァレンチノさんに会いたいな~ここから列車で行ったら直ぐだろ?」
「?あ、ああそうだけど何故急に…野外なら自分がいるから君はトウカ君に会いに行ってくれて構わないんだが?」
 急に提案された話に少し驚き気味だったが、普段なら必ず弟を優先する彼が言わないとは珍しいな。と思い尋ねると
「だって…トウカ今遠征とかの訓練中で会えないんだもん…お兄ちゃん心配…」
「あぁ…そう言えばそういうのもあったね。養成学校時代。まぁ自分も最近帰ってないし…行こうか。そう直ぐにまた事件が起こるとは限らないし」

別に数日位この街から離れた所で支障はないだろう。と思いアキの提案を承諾することにした。
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