― An EvilPurify ― 咲いて散るは薔薇の舞

 翌日。早い目に目が覚めたクロアはまだ寝ぼけ+寝癖が付いたままのコクレイを連れてイベント用にと用意されている控室へと向かった。もしかしたらもう三人目が来ているかもしれないと淡い期待を抱きながら
一応ノックしてから扉を開けて入室してみるが、もう一人の姿はなく部屋自体は静まり返っていた。
「き、期待したのに……」
「居ないっすねー…茶菓子も用意してくれてるみたいなんで頂きましょうよ あ、俺はその前に洗面所行って来ますけど」
大きなあくびをしながら備え付けの洗面台へ向かうコクレイを眺めながら落ち着かない様子でクロアは席に座った。刻一刻と過ぎて行く時間に不安を感じながら何度も溜息を吐いていると、扉の向こうで軽く話し声が聞こえた。どうやら誰かが誰かを案内しているらしい

『それでは私はあちらですので失礼致します。』
「ありがと~グレア トーナメントで会えると良いね(笑)」
『Σご、ご冗談はお止めください…私なんかが貴方に勝てると本気で思っているんですか?』
「はっはっはっは。若いんだから大丈夫だよ さて、チームメンバーに挨拶でも行こうかな」
 そこで会話は終わり、扉がノックされる。返事を返すと扉が開きグレアが姿を見せた
Red Roseのメンバーだった筈の彼の登場に二人は驚いていたが、代わりに扉を開けただけだと説明して直ぐに後ろの人物と入れ替わる様に去って行き、目の前に現れた姿に二人は呆然とした
白い軍服に右肩を覆う様にして付けられた青いマント。左手に持つ杖の柄部分は銀で獅子が象られ、支柱の手前に指で弾けるほどの大きさの突起が付いている杖を使う男性は二人と目が合うと静かにニコリと微笑んだ

「「じ、ジーク様ぁあっ?!」」
「よろしく~」
予期していなかった彼の登場に二人は声を揃えて驚いていたが、彼は特に気にしない様子で空いている席へと腰を下ろした
「ま、まさかあの親父の酒飲み仲間って…」
「ん?うん。そうだよ いや~…シルドラが急にイベントに参加しろとか言い出すもんだから丁重にお断りさせて頂いて、何だかめんどくさい事に巻き込まれそうだったから医務室で過ごしていたらグルワールから連絡が来てね
可愛いお嬢さんたちが困ってると聞いたら手伝うしかないかな?なーんて」
「あ、案外軽いノリで来てくれたんっすね…;」
「てっきりシルドラ様の方へ行くと思ってました…」
「いやいや、確かにアレとは同期で何か勝手に随分と偉い称号と地位まで一緒に貰っちゃったけどそこまでの関係じゃないから;」
 深い溜息を吐きながらありえない。と言わんばかりに必死に否定する姿に、意外そうな反応を返していると室内のスピーカーが作動し、トーナメントが開催されるので所定の入口へ向かう様にと指示が下された。

「おっと時間か…行こうか。そこでくじを引いて相手が決まるらしいよ あ、虹と白は最初に引かないでね」
「責任重大じゃないですか…」
「はっはっはっは優勝には運も大切。ってね?」
サラッと重要な事を言う彼にクロアはげんなりとした様子でがっくりと肩を落としていたが、自分の運を信じよう。と言い聞かせて指定された場所へと向かった。
8/45ページ
スキ