― An EvilPurify ― 咲いて散るは薔薇の舞

しばらくしてエレベーターが止まり、連れられた先は上層部区画にあった本部支部長秘書室前だった
「Σえ?!こ、ここってコクレイのお父様がいらっしゃる所…よね??」
「そうっすよー…本当はあーんまり来たくないんですが…用事が深刻っすからね」
ガシガシと頭を掻きながら気まずそうにそう呟き、大きく深呼吸をしてから扉をノックした
「―…親父!俺っすよ。コクレイ」
「お前か…はぁ……まぁ入れ」
扉の向こうから(やや溜息交じりに)返事が返され、少し離れた所で心配気に見つめていたクロアへOKのハンドサインを送ってみせた。第一関門を突破したと互いに安堵の表情を浮かべながら、秘書室へと入室した

「お忙しい中失礼致します」
「邪魔するッスよ親父」
 部屋は普段自分たちがいる執務室と同じような空間で、休憩用のテラスや椅子がある他に本棚には隙間なく本がしっかりと収められている。只唯一違うのは机の上に積み上げられた書類の量だった。 時折山の様な書類を見る事はあったが彼の場合は規模が違い、書類が積み上げられすぎて椅子に座っているであろう相手の姿が全く見えない。
その光景に呆然と立ちすくんでいると書類の向こうで黒い影が動き、後ろに少しだけ括った黒い髪に口元に髭を蓄えコクレイと同じ褐色の肌。少しツリ目の黒い瞳は親子とだけあって彼女とよく似ている。紺色のジレベストに皺一つ無い白いカッターシャツと紺のベスト。紺のスラックスに身を包んだ男性グルワール=ラングドリーヌが現れ、クロアに向けて深く一礼をした
「お久しぶりですデルタ支部長殿。いつもいつもうちの不甲斐ない娘がご迷惑を…」
「い、いえいえ!そんな事ありませんよ!寧ろ私がコクレイにはいつもお世話になっていますし!」
「不甲斐ない娘で悪かったッスね!!バカ親父!久しぶりに再会したってのにいきなり貶すってどういうつもりだよ!」
「コクレイ!!支部長側近になったのだからもっと自覚を持てといつも言っているのを忘れたのかっ?!大体なんだその制服はっ!!」
「だーかーらー!自覚持ってるって!自覚持ってるから俺なりに日々頑張ってるっての!!制服は動きにくいし暑いし楽なんだよ!」

 久しぶりに顔を合わせたものの、お互いに思う事があったらしく口喧嘩へと発展してしまった為。これでは頼み事も出来ないと察したクロアが慌てて仲裁に入ってくれたお陰で場は何とか治まった
「それで?ここに来たのは私に相変わらず不甲斐ない姿を見せて血圧を上げさせる嫌がらせか?それとも明日の大会メンバーが決まったのか?」
「バカ親父の血圧事情なんて知らねぇっすよ。それより大会だよバーカ」
「全く…お前が毎回そうだから心配事が絶えない。毎日フールから注意を受けているんだぞ私は… で?やっとメンバーが決まったのか?」
やや愚痴っぽくなり始めた頃。少し休憩したいからと二人に断ってから少し離れた場所で机の上に置いていた葉巻に火を付けた
「あ、あのっグルワールさん!今回どうしてもお願いがありまして…明日の大会に私達も必ず参加したいのですがどうたしてもあと一人が足りなくて…」
「色んな退魔師に声は掛けたんだけどどれもフラれ続けててさ…」
ようやく本題に入れた二人は申し訳なさそうに切り出すと、一瞬二人に視線を向けた後に吸っていた葉巻の煙をゆっくりと吐き出した。
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