― An EvilPurify ― 咲いて散るは薔薇の舞

「さぁてここから一気に決めるわよ…!」
 両手に青白い魔力を溜めたまま大きく上に掲げると、頭上に先端が鋭く尖った巨大な氷の柱を三本召喚し、目の前の彼へ一直線に投げつけるが、即座に後ろへ飛んで回避し、巻き付いたままだった剣鞭を取り払ってその辺に投げ捨てンい本目の柱を回避する。
その様子を見ていたジュウザは鉄扇で口元を隠してはいるものの焦った様に唇を強く噛んだ

「お爺様から以前噂程度に聞いた事はあったけどこれ程だったなんて…っ」
「アイツも時と場合と状況を考えてくれたら良かったんだが…」
焦るジュウザとは対照的にヴァレンチノは呆れ返った様子で眺めていると、三本目の柱が放たれたが、先に地面に刺さっている二本の氷が邪魔をして回避がし辛い状況だった為。咄嗟にその場で身を屈めて回避をしたが、柱が刺った事で地面の破片が四方へ飛び散り、それによって彼の右瞼上が切れ片方の視界が赤く塞がれる 止血出来そうなものが無かったのでそのままにして立ち上がると、ジュウザがリング近くまで駆け寄った
「ヴァラファール!貴方…っ」
「ご心配には及びませんジュウザ様。っ…それよりお下がりください 危険ですので」
(この子がオールランイーターを異常なまでに崇拝してる理由気になるわね…ってかこの状況かなり私悪役じゃない?!)
 調子に乗って魔力を開放して全力を出したまでは良かったが、ふと我に返ってしまい内心で(今更になってから)大きく後悔する。

今更ながらの後悔により、両手で溜めていた冷気の魔力が途切れがちになった所をヴァラファールは瞬時に反撃にと槍を胸部めがけて一気に突き出すが、喉元今度は地面から岩の壁を召喚してそれを防ぎ、槍が弾かれ怯んだ隙に壁から巨大な岩の拳が形成され勢いよく一直線に彼を殴り飛ばした。
ぅぐあっ…!!
持っていた槍で防御しようとしたが間に合わず直撃を受けた彼はそのまま背後にあった氷の柱へと背中から激しく叩きつけられその衝撃により持っていた槍が二つにへし折れた。
「っぐ、げほっ…!ごほっ、ごほっ!」
 両膝を地面に付き、片手で身体を支えながらもう片方の手で口元を押さえ必死に堪える。
「そろそろ終わりにさせて貰うわよ…」
折れてしまった槍を持ち直し、それを支えにしながら再び立ち上がろうとする彼にシルドラはありったけの魔力を両手に込め、そして高々と空に掲げると魔力が天へと放たれリングの半分を覆い隠すほどの巨大な氷の山を作り上げる

(あの馬鹿…調子に乗り過ぎだ全く……)「…オールランイーター殿。出過ぎた真似かもしれないが今すぐにでも棄権を提案する」
「くっ…」
 彼の頭上へ徐々に迫る巨大な氷山を目の前に、ジュウザは鉄扇を畳みミシミシと音を立てながら強く握りしめる。


完全に逃げ場を失い、氷山が彼へ叩き付けられるその寸前でリング上にジュウザの鉄扇が投げ入れられた。 その瞬間にシルドラが召喚していた氷山も消え去った
その様子に今まで座して見ていたアーネストも立ち上がり、その真意を問う
『何の真似だ?ジュウザ』
「これ以上は勝機が見えないから棄権させて貰うと言う意味よお爺様…」
『ほぅ…私の座を狙う貴様が棄権するとはな』
「この程度で忠犬を失う訳には行きませんもの…降りてらっしゃいヴァラファール」
「で、ですがジュウザ様っ!私はまだ…」
勝利を約束していた分。彼女へ棄権をさせてしまった自分の不甲斐無さに打ちのめされながら鉄扇を拾い、リングを降りると静かに微笑みながら彼女はそっと頬を撫でた。
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