― An EvilPurify ― 咲いて散るは薔薇の舞

リング上へ上がってしまったジークを見てリックは先程以上に表情を青ざめさせた

フレイアー!ごめんなさいっ!悪気は無いからー!!
別のチームメンバーになっちゃってたからって別に怒ってるとかじゃないッス!!
リング下では居残り組となってしまった上司二人が口々に弁明をしているが今の彼にその声は一切届いてはいない

「さてさて~対戦相手が集まったところで行くぞい!!まずBlue Rose!纏う蒼が隠すのは本音か腕か若いあの時の恋情か!紺碧の老獅子 ジーク=エイス=クルセード!
Green Rose!二人暮らしの中で鍛え上げられた炊事洗濯掃除の腕は伊達じゃない!影の苦労人リック=フレイア!
「好きで極めたんじゃないんだけど…」
「はっはっはっは」
作者によるお互いのリングネームが発表され、思わずツッコミを口にするリックとは対照的に、ジークは特に気にしていないのか表情を変える事無くその場で笑って返した
「お二人をイメージしてみた…ぜ☆と言う訳だから特にリック!気合入れて挑めよ!はじめっ!!」
 
適当な応援を送った後にリング下へと作者が飛び降りたと同時に開始されてしまった第一試合。 目の前に立つ英雄に完全に圧倒されてしまっているリックは小刻みに震えながら、リング下からこちらを見上げているエトワルへ(今すぐにでも棄権させて欲しい。)と言いたげな視線を恐る恐るそっと向けた。が、「この場で棄権したらどうなるか解っているだろうな?」と言わんばかりに冷ややかで威圧のある眼で彼を睨み付けていた。
「さっさとその剣を抜いて立ち向かえ。俺が選んでやったんだからそれ相応の働きをしろ」
「む、無理ですってっ!俺らみたいな下っ端が英雄様に会える事すら恐れ多いのに剣を向けるなんて…;」
「はっはっは。そう怖がらなくっても平気だから遠慮せず剣を使ってくれて構わないよ?今日は…そうだなー…お祭りみたいなもので無礼講だから。ね?」
「…だそうだ。」
「はい……;」

大きく肩を落としたまま、全力で息を吐いてから彼は柄をしっかりと握りしめ、白銀の刀身をした片手剣をしっかりと構えると、ようやく決意したのか表情が変わった
 剣を構えたリックとは違い、何かしらの武器を構える様子を見せないジークとの間合いを詰めるべく、一気に突きを放つが彼はそれを軽々と避ける。 間合いを詰め、縦や横に斬りかかるリックの攻撃をまるで何事も無いかの様に最低限の動きで後退しながら全て交わしてみせる
「さっきの赤い子とは違って基本に忠実な動きだなぁ…うんうん、真面目で何より」
「あ、え?それってどういう…」
「んー?養成学校での教えを忠実に覚えてるんだな~ってね 新人隊員の研修も兼ねてるから動きを見ていればよく解る。…っと」
のんびりとした口調で答えたのもつかの間。気が付くとジークはリングの端へと追い詰められていた。
「やれやれ…つい油断しちゃったみたいだ」
 あと一歩でリング下へ落ちる所まで追い詰められたにも関わらず彼からは一切の焦りや反撃に動じると言った動きが見られない。だが
(まさか…チャンスってやつか?!)
そう悟ったリックが、最後の一撃として突きを放った時だった。 先程まで後退でしか避けなかったジークがひらりと身をを翻して避け
「基本に忠実なのは感心するけど、君の場合はもう少し視野を広げた方が良いかもしれないね」
そう告げてリックの背後へ瞬時に移動し、彼の腰付近を持っていた杖の先で軽く押した。 目の前にいるはずだった対象を大きく外し、そして背後からの軽い一撃で完全にバランスを崩したリックは足をもつれさせながらリング外へと着地してしまった。
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