― An EvilPurify ― 咲いて散るは薔薇の舞
『これで定例会議を終了させて頂きます』
赤いマスケラを付けた白い軍服の青年。グレアの一言により、ずっと資料に視線を向けていた支部長たちは疲れた様子で各々伸びをしたりあくびをしたりと、緊張の糸が解けたかのようにリラックスしていた
ようやく終わった堅苦しい会議から解放され、さっさと帰ろうと一番にセドが席から立つと、慌ててグレアが呼び止めた
『あ、お待ち下さいサースリスト様。会議は終了致しましたが実はまだ別のお話がありまして』
「はぁ?まだあるのか??」
『はい、ここからはミラージュ様が代わりに説明して下さいます』
帰りたがるセドをもう一度席に着席させ、彼は出入り口の扉を軽くノックして合図を送ると、扉が開きそこからは少し厚めの資料を持ったシルドラが入室した。 予想外の人物の登場に一同は驚いた様子だったが、別に心配しなくても良い。と言わんばかりに手で制し、先程までグレアが居た席へと着席した
「定例会議お疲れ様でした 支部長の皆様方。本日私が会議の延長に出席させて頂きましたのは、我がRainbow Rose総本部支部支部長アーネストが提案致しましたイベントのご説明に代理で参らせて頂きました」
今まで見ていた表情が豊かでやや騒々しかった時の彼女とは違い、表情は冷徹さも感じさせるほどに冷たい鉄仮面の様で今日の彼女はアーネストの直轄部下として来ている事もあり、他を寄せ付けない圧倒的なオーラを纏っていた。
「イベントと申しましても簡単な事です。今から約一週間後…支部長の皆様には総本部支部の広間へ来て頂きたいと言うものです
その際に、‟退魔師であればどなたでも”構いませんので三人一組で出席して頂きます そして…トーナメントに参加して頂きます」
「トーナメント…ですか?」
話の内容が上手く捉えられず、ぽつりと呟く様にクロアが疑問を口にするとシルドラは静かに頷いた
「トーナメント…と言っても武の舞の様なものです。アーネストが企画した市民の皆様方へのイベントを前にした余興と言うものです
会場には正方形のリングがあり、そこで皆様方が選ばれた退魔師を戦わせる事となっています 勝敗は相手をリングから落とす。負けを認めさせる。で決められ、相手を殺す事は認められていません」
「うっふふふ。お爺様も本当に物好きなこと…では、忙しい私たちにそんなお遊びに参加させておきながら…何もないのかしら?」
「御安心下さいオールランイーター様。アーネストは武の舞の優勝者には“望むものを一つ授ける”そう申しておりました。例えば自身の地位を…或いは機密資料を…使い切れぬほどの資金を…と」
シルドラの挙げた例に対し支部長の数人がわずかに反応した。
「では、話はこれにて終了とさせて頂きます。退魔師のみ…と説明させて頂きましたが極端に言えば“退魔の力が使えるもの”であればどなたでも参加が可能ですのでお急ぎくださいませ そして、人数が集まられた方は秘書のグルワールへ申請を行って下さい
それでは…失礼致します」
スッと席を立ち、皆に向けてやうやうしく一礼をすると彼女は颯爽と部屋を退出して行った。残された支部長たちは疲れたように息を吐いたり紅茶を嗜んでいたが、その表情はどれも気難しそうであった。
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