夢より現れしは紅き退魔の剣

 御幻達の居る反対側の人混みには、橙色の腰ほどの長さまであるストレートの髪に、日よけ用サングラスと日傘を差した、背中が大きく開いた色の白い黒いナイトドレスの女性を先頭に

オーカー色の髪に同じく日よけ用サングラスを付け、特に胸元を強調するようにしている黒いレザーコルセットと短パン網タイツ。と言ったいかにも挑発的な衣装の女性が軽やかな足取りで後から歩き

黒い耳付き帽子を深く被り、金色の腰ほどまである長い髪。前髪で目元を覆い隠し、前部分を開けた白いパーカーをベルトの付いた長ズボンを着用する青年が、二人の数歩後ろをよろめきながら沢山の荷物を抱えて歩いていた

『す、少しぐらい待ってくれたってっ…アカンかー…?』

『おっそいわよ。早くして頂戴 家では可愛い妹たちがお待ちかねなんだから』

『今日は割と日差しが強いわ…』

『例え倒れても私が徹底的に介抱してあげるわ♡』

 軽やかな足取りの女性がご機嫌そうにそう言うと、先頭を歩いていた女性は彼女へ一瞬視線を移したが、直ぐに前を向いてしまった。
そのツンッとした態度に笑みを浮かべながら共に歩いていると、二人の視線の先に紅い髪の女性 御幻が見えた。 その姿を見つけ二人は足を止めた。

『セフィ…あの子って…』

『只でさえ追われ身だと言うのに…あの時の子が…ねぇ』

微かに残る記憶の中にいた紅い髪の少女。その子が成長して、今は自分達の目の前にいる事に彼女は口角を上げた

『何の因果かしらね…全く。』

『ある意味、あの時逃がすべきじゃ無かったかしら…?』

『どないしたんー?』

『今は街中。騒ぎはごめんだから早く帰る事にしましょう だから今は挨拶位で済ませておきましょう』

 後ろからようやく追いついた青年には説明はせず、二人はもう一度歩きだし人混みに紛れつつも、御幻達が立っている近くをわざと通ると、警戒をしていた御幻と一瞬だけ視線が合い、金色の目が大きく見開かれた。
驚きによって声が出ないせいか口パクで彼女の名を紡ぐが、その姿は直ぐに人混みにへと紛れて行った。
 彼女達がその場から離れた事で、金色に光っていたエクの目は元の赤紫色へと戻った。

「何かよくわからねぇけど…俺の目、元に戻った?」

「何で…何でアイツらがここに居るのよ。とにかく!今は情報が欲しいの!!もう寄り道は良いからさっさと城に案内して!」

やけに慌てた様子で急かす御幻を怪訝そうに見つめていたが、反論したらまた何かしらの制裁が飛んできそうだったので、今回は何も聞き返す事無く城門前へと到着した。
 今日の門番担当も相変わらずブレームだったので、エクは他愛ない話をしていたが、彼は何かを疑う様子も無く御幻にも挨拶を交わしていた。 

 御幻曰く、「周りの人達の記憶をいじった」とか何とか言っていたけれど本当だったんだ。と内心で感心していると門が開門され、二人は中へと入城した。
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