夢より現れしは紅き退魔の剣

玄関脇に連れて行かれ、混乱する間もなく平手打ちと言う名の制裁が下された

「折角私が!周りの皆に疑われない様にー。ってアンタと幼馴染です。って記憶をいじっておいたのに根っから否定する馬鹿が何処にいるのよ?!」

「いってぇぇ…何もいきなりしばかなくても良いだろ?!何も説明なくいきなり家に押しかけやがって!」

「ある程度は説明してあげたけどアンタの理解する能力が乏しいからよ!バカ!良い?!言っておくけど、私はアンタの幼馴染!一定の人達にはそう記憶をいじらせて貰ってるから。後はアンタが話を合わせるのよ?」

「えー…めんどくせぇ…演技とか難しいし、そもそも魔物とか本当にいるのか?今まさに俺の目の前にいる御幻の方がまも…Σへぶっ?!」
 最後の一言が余計だったらしく、先程よりも強烈な一撃が制裁として腹へ下された。

それからしばらくして、玄関脇から帰宅する頃には生傷が増えていたエクは、ようやくの身支度を整えた。
サンは庭の桜を眺めてから帰る。と言っていたので、先に御幻と城下町を話しながら歩いた。

「随分賑やかなのねー。人が多いしそれに露店も結構あるわね」

「なんたってこの国は祭りが多いからな~それでじゃね? それより御幻。俺がそのー…なんだっけ?退魔がどうとか言ってたけど感知って何?」

「その名の通りよ。何かしら人とは違う何かが近くに居れば、目が金色に光る。ってもの
私達一族にとって憧れでもある退魔師さまが使える能力の一つらしいわよ まぁ、アンタなんて、私が近くに居なきゃ只のどーしようもないガ・キ。だけどね?」

「(イラッ)あんだとコラァア!!」

「ふふ~ん♪あ、でも一般人が私達を経由して退魔師さまと同じ能力を使うって事は相応の……ううん。やっぱいいわこれは」

「?何だよソレ…気になるだろ?」

「…い、今は良いの!もしかしたら必要のない情報かもしれないでしょ?」

 先程までの饒舌な彼女にしては珍しく歯切れの悪い様子で視線を逸らし、続きを聞こうにも「この話題はおしまい。」と言わんばかりに彼女は一方的に口を閉ざしてしまった。
ちぇ…。とふてくされた様子で、城へ遊びに行く前に様々な露店を眺めて寄り道をしている時だった。

 人混みの真ん中であるにも関わらず突然御幻がその場で足を止めた。
それにつられるようにしてエクも半歩先で同じく止まると、目の部分がじわりと熱くなるのを感じた。

「なんだ?これ…なんか、目が熱い気がする…」

ごしごしと両目を袖で擦るも、それは一向に変わる様子も無く、辺りを何回か見回すうちに赤紫色だった目は徐々に金色へと変わった。

「感知の目が何で…?まさかこの近くに?」

不穏に思い警戒していると、二人の立っている向かい側の人混みの中へ反応が強まった。
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