夢より現れしは紅き退魔の剣

『…まだよ……っ。私、達は こんなところでまだ終われないわ…』

『夜狩りで、消された一族の…復興もそうだけど……私たちがっ…は、…真の意味で自由を手に入れるまでは終われないのよ…!』

まるで自分たちに言い聞かせるかのようなその言葉にエクは疑問を覚えたが、まずは身を守る方が先かもしれないと座りこんだまま防御態勢に入ったが、斬られた傷口からは尚も石化が進み続け彼女たちは辛そうに咳き込んでいた。


 そんな時だった。玉座付近から適当な拍手が聞こえ、皆がそちらに注意を向けた瞬間。乾いた銃声が数発その場に響いた。

『ぐっ?!!』

『っ?!』

絞り出すような弱々しい悲鳴と共に、突然足を撃たれた彼女たちはその場に倒れた
一体何が起こっっているんだろう?そう感じた御幻は剣の姿から人の姿へと戻って玉座を見つめると、そこには黒いローブを纏った青年。トレートルの姿があった

『あっははは。凄い、凄いなぁ君達は その頑張りを称えて僕は拍手を送ろう』

「アンタは…」

あ!えっと…確か……トレテルっ!!

「そうトレテル……Σち、違うわよっ!ええっと…トレーテル??」

曖昧な記憶だった為。名前が曖昧だったので間違えて呼んではいたが、彼は別に否定も肯定もせず、その場に立っていると、リースとの戦闘を終えた水晶が礼拝堂の中へと到着し、御幻達と合流した

「主ら大丈夫であったか!?」

「水晶…そっちも大丈夫そうなのね」

怪我は負っていたものの、平気そうな彼女の姿に御幻は安堵の表情を浮かべていると、トレートルは水晶の方へと視線を向けながら目の前の階段を下りてセフィリア達の元へと歩み寄った。

『へぇ…深時。君までもが生き残っていると言う事はリースは失敗したと言う事か…やれやれ…まぁ、反抗的ではあったけど使い勝手はある程度良かった奴だったから少し惜しいかもしれないね。ふふふっ』

『一体…どういう、つもりよ…っ!今になって…私、達を…裏切るなんてっ!』

『裏切る?あっははは。随分とおかしな事を言うようになったんだねレルク 僕が君達を裏切った?違うよ。「君達が僕の期待を裏切った」そうだろう?僕は前に、不安要素である剣姫達を殺す様に命じた筈だよ?
 なのに君達は…そんな簡単な事ですら出来なかった。失望したよ…全く』

一切の躊躇も感情も感じられない程に冷静な口調で淡々と言い切るが、納得が行かないとレルクは強く睨みつけた

『失望し、たのは…アンタの勝手だけれどっ……わざわざ来たのは…っ…私達にそんな、嫌味を言うため?撃つ相手も…的を間違えてるんじゃなくて?』

『いいや、何も間違ってはいないよ。』

短く言い終ると同時に、彼は構えていた銃をレルクの心臓めがけてもう一度発砲した。

―――っ!!!レルクっ!!

乾いた銃声の音と、悲壮なセフィリアの声が礼拝堂に響いた。

『レルク…起きなさいレルク!ダメよ死んでは…っ貴女だけは生きてって…約束したじゃない……』

トレートルに撃たれた傷口からは生温かい血液が流れ出ていた 地面に横たわったまま這う様な形で少しづつ移動し、震えながら伸ばした手で触れた彼女の手からは急速に体温が消えていくのを感じてしまった。
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