夢より現れしは紅き退魔の剣

「そうだ忘れてた!俺さ!最近変な夢見てさ…どっかで会った記憶も無いけど、夢の中でこう…長い紅色の髪で金眼の背の高い女の人が話し掛けてる感じの夢なんだけどさ、何か知らない??」

エクの唐突な問いかけに水晶以外の皆は首を傾げ、思いつく限りの事を言い始めた。

「僕はそんな夢見た事無いし会った事も無いから知らないなー…シェリルは?」

「私も知らないー」

「レーン…あのね。ボクはエクの言っていることが白昼夢じゃないか?って思うんだよ…」

「そうだな…最近本当に甘やかし過ぎているとは思っていたけれど…まさかそんなレベルまで来ていたなんて…師匠に顔向けできないな…っ!」

「ねーねー。はくちゅーむって何?」

「シー兄ぃ?レー兄ぃ?何かおかしな方向に話が進んでないー?」

 話が脱線している。と呼び掛けてみても、二人はエクよりもリークへ説明を先に行った。

「えっとな、リー君。白昼夢って言うのは…そうだなー…起きてる時に現実味を帯びた非現実的な体験を……んー…現実に満たされなかったお願い事とか空想する事が多いって事かな?」

「特にエクがなりやすいかな~?リー君もなっちゃダメだよ~?」

「うんー!」

Σ俺を悪い人の例みたいにするんじゃねぇぇええっ!!!俺は本気で相談してるんだぞ!」

キィィィイ。と唸りながら、真面目に取り合ってくれないシーラとレーンの二人をぽこぽこ殴るが、効果は無いらしく笑って返されてしまった。 悔しそうに顔を赤くして唸っていると、今まで静かに様子を眺めていた水晶がようやく口を開いた。

「主の言う紅い髪と金色の眼の者…多少なら心当たりがあるが…?」

「Σえ?!本当?!水晶ちゃん!」

 ようやくまともな返事を返して貰えた事が嬉しかったらしく、彼女の方へと一気に駆け寄り顔を寄せた。

(近いのう…)「だが、先に断っておくが…私が知っているのは彼女に関して一部の事だが…主の夢にのみ現れたと言う事は、退魔師と言う魔を祓う能力がある者と何かしら合うと考えればよかろう。
 退魔師は決められた者のみがなれるが、彼女の一族は普通の者でも退魔師と同じ能力を持てる様になると言うものだ …その一族は滅ぼされたと聞いておるが…」

「水晶ちゃん…もっと人の言葉でお願いしても良い?」

「主……。要するに、特別な力を一般人でも使えると言うものだ。限られてはおるがな」

「へー」

「波長がとか言うけど…でも、エクに限ってそんな事ありえないと思うよ?…常に他力本願だし…基準とかどうなってるの?まともに剣術すら出来ないのに…」

「そこは流石に知らぬ。ただ、どうしたいかは主の自由と言うものだ」

(色んな意味で)心配そうにサンが訪ねてみるが、水晶自体もそれ以上は知らないらしく首を横に振った。 エクにもあまり詳しくは伝わっていないらしく、頭の上に疑問符を浮かべていたが、なる様になれば良い。とその時は適当に考えて日が傾き始めた頃に、彼は城下町を通って郊外にある道場へと帰って行った。
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