夢より現れしは紅き退魔の剣

 必ず一本取って見せると決意を込めた日の翌日。

~~~っ!やっと一本とれたぁああ!!!

 道場全体に響き渡る程の大きな声を余所に待機していた二人は予想外の出来事に目を丸くしていた。
剣をしっかりと握りしめたまま両腕を大きく広げ、何回かその場で飛び跳ねる等と全身を使って喜ぶエクの向かい側ではシーラが苦笑交じりに座り込んでいた

「まさかエクがこんなに体術も剣術もこんなに上達してるって知らなかったよ~ふふふ、負けちゃったな~」

やった♪やった!シー兄に勝てた!

「ヘルヴェイルは使って無かったけど…シーラから一本取れるなんて…」

「昨日はそうでも無かったのにな…おーいシーラ、大丈夫か?」

「剣が来たから反り返った時に足が払われちゃって転んだけど平気だよ~ 勝ちの証に剣を向けられちゃったけど当たってないから」

よいしょっと呟きながら立ち上がり、軽く伸びをすると、背負ったままにしていたヘルヴェイルが話し掛けた

『お疲れ様でしたマスター ですが…宜しかったのですか?私を使わなくてもマスターなら足払いからの受け身は取れたはずなのに…』

「ふふふ、買いかぶり過ぎだよ~? でもエクがあんなに本気で来た時にいつも通りで油断しちゃったのもあるけどね~」

ヘルヴェイルからの問いかけにそれ以上は言わなくて良い。との意味を込めて柄頭の部分に人差し指を軽く置いた。 
 エクの喜びがようやく落ち着いた辺りで、レーンが休憩ついでに町の喫湯店に行こう。と提案してくれたので、三人が着替える間。エクには御幻がもし居るなら一緒に声を掛けて来てくれと頼まれ、やや困惑しつつ一旦道場から出て少し離れた陰になっている場所で剣を地面においてやり、普段の姿に戻ってから話しかけた

「レー兄が喫湯店行かないか?だって 御幻、どうする?」

「わざわざ私まで呼んで貰えるなんて思ってなかったけど…そうよね、折角なんだからご一緒させて貰う事にするわ。何か…彼らの事も知ってみたいから」

「そっか、じゃあ行こうぜ!喫湯店はこの前行ったけど今日は何にしよっかな~?」

珍しく一緒に行くと言ってくれた御幻にご機嫌な様子でその場で飛び跳ね、道義袴を着替えるために部屋へと駆けて行った それを見送り、ぼんやりとしたまま先に玄関付近で立っていると着替え終えたサンと合流し、他愛ない会話を交わしているとシーラも合流し、少し遅れてレーンとエクも合流して出発した。
 町に向かうまでの最中終始ご機嫌なまま先頭に立ったまま歩き続け、店に到着すると店員のフローレンに挨拶を交わした

「こんちわ~フローレンの姉ちゃん!」

「あ、エク君~いらっしゃいませ!レーンさんに、皆さんも 丁度そこの席が空いてますのでどうぞ」

 割と広い席に席に案内してもらい、五人は各々好きなように飲み物を注文し、待っている間。各々好きなように話していた。
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