夢より現れしは紅き退魔の剣

 午後の稽古が中止になったその日の夕方。三人が帰った事を確認した御幻はようやく剣から人の姿へと戻り、大きく伸びをした

(あぁー…肩凝った。午後の稽古…中止にはなっちゃったけどホントに動きも上達してるのねー…)

今までそんなに意識していなかったっけ…と心の中で呟きつつ、道場から出て扉の施錠を行ってから部屋へと帰ると、顎部分にぬれタオルを片手で押さえたまま布団の上で転がっているエクの姿があり、御幻が帰宅した事を見つけると手を振って合図した

「あ、御幻お疲れ~」

「ある意味でそれは私が言うセリフなんだろうけど…平気なの?物凄く打ち上げられちゃってたけど」

「うーん…なんか確かにお空回ってて星が輝いてたけど大丈夫だって」

仰向けに大の字でごろんと寝転がり、大きく投げだしていた右手の甲をかざす様にして眺めた

「感覚だけ…だけどさ、稽古の時にしてみた体術とか剣術…何となく分かってきてる気がするんだよ だから明日こそぜってぇ三人の誰かから一本取って見せる!」

ぐっと決意を込めた様に拳を握りしめ、得意気に笑ってみせると彼女もつられて笑ってくれた後。稽古を中断した際に気になっていた疑問を問いかけた

「なぁ御幻。思ったんだけどー…御幻が剣の時にサン姉ちゃんやレー兄が運ぼうとした時に何か出たけどアレ何?新しい静電気?」

「Σなっ…何でそうなるのよっ!!ば、ばか!違うわよ!!そもそも柄は金属じゃない! …ざっくり言うと拒絶反応的な物よ。波長合わない場合は触れるのも出来ないって訳。 憧れの退魔師さまならそれは無いけど……エクの言う従姉弟?の人ならセーフなんじゃない?」

「へぇ~…まぁその辺は今更気にしても仕方ねぇよな 明日に向けてもう休もうぜ!明日はぜーってぇ勝つんだ!!」

「はいはい、きたいして待ってるわー」

力強く言い切るエクに対し、普段の少し冷めた様子で返してやってから彼女も部屋に戻った。
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