夢より現れしは紅き退魔の剣

先に到着してシェリルと他愛ない話をしていると、準備を終えた二人も合流し、先にレーンが相手をするのでサンは隅に寄って待機した。

「おまたせエク。確かさっき…素振りは終えたって考えていいのか?」

「あー…一応な!だから実践頼むよ!二人一気には止めとくけどレー兄の鉤爪とかも練習しておきたいし!」

「そ、そうか。エクがそんなにやる気に満ち溢れてるのは別に良いんだけど…大会近いからか?」

「え?えー…まぁ…そんなとこ……なのかな? い、いや!ほらアレだよ!やっぱ町から遠いから護身ももっと必要かな~?って ほ、ほら!よろしくお願いしますっ!!」

「よろしくお願いします」

お互いに向かい合って礼を交わし合い、普段使っていた素振りの型へと両手でしっかりと剣の柄を持ったまま一気に駆け出した
 エクの持つ剣が射程圏内に入った所で前に大きく振り下ろすと、(ちゃんとカバーを装備した)片方の鉤爪で剣を弾き返し、ガードが間に合わなくなった胸部付近めがけてもう片方の鉤爪で突きが当てられ、よろめいた彼はその場に尻餅を付いてしまった。

「いっててて…」

「大丈夫だったか?エク立てるか?」

「平気平気、こんなぐらい何ともねぇよ!それよりレー兄!続き頼むよ!!」

差し出して貰った手をしっかりと握って立ち上がり、もう一度お互いに距離を取ってから稽古を開始した。


数十分後。手加減をしているレーンの動きにも対応出来る程に上達した辺りで一旦休憩する事にした

「エック凄かったよ~!あんなに重たそうな剣を時々途中から片手で使ったりしていたんだもん!!」

「前の頃は木刀ですら重いから嫌だ。ってごねてたのに…何か変わったよね よく知らないけどその剣のおかげ?」

サンの問いかけに一瞬え?となっていたが、隣に置いていた剣を一旦自分の膝の上に乗せて一回頷き、昨日御幻と話していた事を思い出した。

――――――――――

「エク、明日の稽古から私を使ってくれる?」

「使う??どうやって?一緒に参加するのか?」

「ちょっと違うわ。前にちょっとだけ言ったけど私達の一族は言うなら契約者の剣となる存在なんだけど…」

「えー…と…そうだっけ?」

「だと思ったわ…要するに、私達は契約者…つまりエクだけが使える退魔の剣になれるって事。但し、私がその姿になってる間はシーラさんの刀みたいに動くのも喋るのも出来ないけどね」

「へぇ~…それでも凄いなぁ でも扱えるか心配なんだけど…俺、木刀よりも重いのとか正直持ちたくない…」

「へぇ…あの時私に言ってくれて言葉は嘘だった…とでも言うのかしら?」

やだやだ。と自信なさそうに首を左右に振ってみせるが、無言のまま装備爪で頭を掴まれてしまった。 今承諾しないと絶対殺られるっ!!と本能的に察知したエクは黙ったまま何回も頷いた


 その事を思い出してつい目元が暗くなったが、彼らに気付かれる前に気を紛らわせようと頭を掻いた。
34/66ページ
スキ