夢より現れしは紅き退魔の剣

「は~っ満足満足♡ありがとね~フローレンの姉ちゃん」

水晶からおこずかいを貰ったエクは教えて貰った通り、城下町を歩き回りながら開いている顔馴染みのいる喫湯店(テルモポリー)で休憩していた。

「まさかこんな時間にエク君が来るなんて珍しい事もあるのねー…保護者の皆。心配してない?」

頭に白いバブーシュカ(三角巾)と腰にだけエプロンを付けた茶髪の女性は心配そうに首を傾げた

「へーきへーき♪(別の)保護者公認だからさ」

「そうなんだ…あ、おかわりはどうする?ジュースが良い?」

「んー…ん、やっぱいいや!俺そろそろ帰るよ またレー兄ぃ達と来るねー!」

 お会計を済ませ、送って行こうか?とフローレンは提案してくれたが、この位は平気と告げて店の前まで出て見送ってくれた彼女に手を振って別れを告げ、おこずかいを貰った時と同様に筋肉痛を微塵も感じさせない軽やかな足取りで彼は城下町を出て少し暗い道を進んでいた。

ふと上を見上げると青黒い空には無数の星が輝き、数羽の蝙蝠が飛び交い月も中々高い所まで昇っていた

(あんまり気にもしてなかったけど結構遅くなっちゃったんだなー…へへへっ☆)


内心で全く反省をしないまま再び歩き出した時だった。彼の背後で落ちていた小枝を踏み折る音が聞こえ、反射的に振り向くとそこには頭と腰にあった羽は無いものの、相変わらずの高露出をしたレルクがいつの間にか現れていた。  その挑発的なまでの高露出に、思わずエクは顔を赤くして息を呑んだが直ぐに目のやり場に困ったらしく慌てて俯いた。

『こんばんわ~少年くん。こんな夜にお一人でお散歩?』

「こ。こんばんわ~えっとその俺はー…///」(や…やっべぇ…前向けない…っ!!)

レルクの問いかけに対し真っ赤になったまましどろもどろで答えると、愉しそうに彼女は嗤いながら続けた

『もし…少年くんさえ良かったら…私とお散歩でも…してくれないかしら?夜道を私一人で歩くのはきっと危険だから…頼もしい貴方に…付いて来て欲しいの…』

 ねだる様な甘い声と熱を孕んだ蠱惑(コワク)的な視線を向けながらエクの目線に合わせる様にして腰を曲げ、あえて両腕を寄せる事によりより一層胸を強調して魅せた。

『やっぱりダメ…かしら?』

「~~っ///お供しますっ!!!

完全に彼女の色香にあてられたエクは、問いかけに即答で答えると、レルクは目を細めて笑いながらそっと手を差し出すと、それに応える様に彼も手を重ねた。
 少しだけ差のある手をゆっくりと絡ませつつ自分の方へと強くエクを抱き寄せ包み込む様にして抱きしめた。

『ありがとう少年くん…ねぇ…こっちを見て?』

空いた手で顎をくいっと上げて自分としっかり目線を合わさせ

『さぁいらっしゃい…甘くて刺激的な夢の世界へ…』

「んっ…れ…なんか、眠く……」

言葉が言い終ると同時に一際大きく彼女が目を開くと、レルクの目は薄紫色の妖しい光を放ち、それを見させられたエクの目は虚ろな目になり、そしてレルクの腕の中で静かに目を閉じてしまった。
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