夢より現れしは紅き退魔の剣

エクの寝転がっている部屋に通され、布団の近くまで歩み寄ってからその場に正座していたが、部屋の内装が物珍しいらしく壁や天井を大きく眺めていた。

「水晶ちゃんこういう部屋が珍しいの?」

「うむ…私の住む方でもこういう内装というのは見かけなくてな…落ち着きがあって良い場所だな。向うを眺めれば桜も見える」

目を細め微笑みながらそう呟かれ、エクからすると普段から見慣れた光景でもあったのでそうかな?と首を傾げていた。
しばらくして台所からお茶の用意をした御幻も合流し、お互いに近況について話し合おうとしたのだったが…

「エク…アンタちょっと外に出といてくれない?」

「…Σはぁ?!!な、何言ってんだ突然!!一応と言ってもこの家の主様を追い出すってどういうつもりだよ!!身体痛くて動けねぇってのに!」

「だってアンタがいるだけで余計な茶々とかありそうだし…ましてや別の場所確保は難しいしお城なんて流石に入れないもの」

「主悪いな…私も今回ばかりは剣姫に同感だ」

「水晶ちゃんまでぇぇ……」

申し訳なさそうに言われてしまい、ふてくされた様子で頬を膨らませながら布団にしがみついていると、水晶が提案を出した。

「そうふてくされるでない。今度私が帰った時に部下の作るお菓子やこちらで流行っている物でも特別に用意してやろう だから今は…」

そこで一旦言葉を切り、懐から紙幣を取り出し

「城下町の一部はこの時間帯でも店が開いておってな…良ければこれで食べ歩きでもして来てはどうだ?」

!!行く!行く!いっきまーす!!

差し出された紙幣をしっかりと受け取ると、疲労や筋肉痛で動けないと言っていた事を微塵も感じさせない素早く軽やかな動きで玄関へと走って行ってしまった。

「道中気を付けてちゃんと帰ったら歯を磨くのだぞ!…ふふふっ。随分元気の良い子だのう」

「私より簡単に扱われてるだけなのに…何?この敗北感…」

自分の時よりも簡単にエクを扱う彼女に敗北感を感じていたが、気を取り直すように用意したお茶を一飲みしてから、近況に関して先に始めた。

―――――――

「…目立った手がかりはナシって訳ね」

「うむ…どうやらその様だな…」

 お互いに話を始めて三十分は過ぎたであろう頃。休みなく話していた事もあって、二人はしばらく休憩を挟む事にした。

ぬるくなってしまったお茶を一口飲み、水晶はため息を吐いた。

「各国にいる別の者達にも連絡を取ったといえ…こうも手掛かりが無いと言うのはどうも…大国に派遣された者には逆に愚痴を聞かさせられた程だからな…」

「苦労多いのね;でも私の情報に嘘偽りはないからね?あの時確かに間違いなく見たのに…!…只でさえ時間だって限られてるんだから稽古もさせて早く見つけてしまわないと……」

 ぶつぶつと独り言を呟きながら落ち着きがなさそうに御幻はその場を歩き回り続けていた。

「それにしても…あの者は遅いのう…一体どこまで食べ歩きに行っておるのか?」

「確かにおっそいわね…」

水晶にそう呟かれ、ハッと我に返った御幻は彼女の言葉を被せるようにして同じように呟き、玄関まで出て辺りを見回した。
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