夢より現れしは紅き退魔の剣

 まずは練習に僕から始めようか~。とのんびりした口調で言われ、サンは隅に寄って正座して待機し、エクとシーラは開始前にお互いに向き合って軽く礼をし合った

「それじゃあ、お願いします~」

「…おねがいシマス…」

 不本意そうに口を尖らせながら礼を交わし、木刀を構えるといつまで経ってもやる気の出さないエクを見かね、シーラはある事を提案した。

「ん~…あ、そうだエク もしも僕から一本取るかヘルヴェイルを使っちゃえば、プライベート旅行中の王様達にお土産頼んであげるよ~」

よっしゃぁ!!それなら俺すっげぇ頑張れる!!」

嬉しそうにガッツポーズするエクに対し、心配そうにヘルヴェイルがこっそりシーラに尋ねた

『宜しいのですか?マスター…そんな約束なされて…』

「頼んでみるだけ。だから大丈夫だよ~でも四人の中でお財布係してるのはライチさんらしいからどうなるか分からないけどね~」

『…何だか心配です;』

「ふふふ~。よし、じゃあ始め!」

パシッ。と手を叩いて開始の合図を行った途端。威勢の良い掛け声と共に木刀を持ったエクが一気に駆け出し、大きく振りかぶって木刀を振るってみるも、彼はいつもの笑顔の表情を崩さないまま軽々と避けた。

「く…っそー!まだまだだっ!!てやぁぁあっ!!」

「ほらほら頑張れ~」

 何度も木刀を振るってみるが、度の攻撃も全て笑顔のままで軽々とかわされてる事が続き、次第に苛立ちが募り始める

「ああもう!何で当たらねぇんだよ!!さっきからひょいひょいかわしやがって!」

「エク~怒ったら余計に当たらなくなるよー?ほらほら、そんな適当に振り回すんじゃなくて素振りの時はどうやってたのかな?型はちゃんと教えた。って聞いてるよ~?」

「素振りの時ぃー?……確か…」

言われた通りに木刀を構え直し、素振りの要領で前に大きく振るうと、声を掛ける代わりに彼は数回頷いた。

(だったらこの型を維持して…そのまま一気に駆ければっ!!)

言われた通りの型をちゃんと維持したまま持ち前の瞬発力で一気に駆け出し、肩部分めがけて振り下ろそうとした寸前で、さっきまで笑顔だったシーラの表情から僅かに余裕が消えたと思ったのも束の間。腕を掴まれたエクは軽く宙を一回転の後。床へと叩き付けられた。

「Σいってててぇぇ…??あ、あれ?今一体何が??」

「あまり見えてなかったけど…シーラが投げ飛ばしたみたい?」

「ごめんごめんエク!つい力が入っちゃって…はい、僕の分の修業は終わり~しばらく休憩しよっか~向こうで休憩しておいで~ 後で呼びに行くからさ」

「お、おう…そうするよー」

投げ飛ばされた事で少し痛む背中をさすりながらエクは道場を出て部屋に向かって行った。
その場に残ったシーラは軽い伸びをしてからその場に座り込んだ。
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