夢より現れしは紅き退魔の剣
「無理なものは無理だってぇぇええっ!!!
翌日から始まったエクの剣術特訓。
手の空いている時に交互で面倒をみるようにと約束してくれたので、今は道場の中で共に道場袴へ着替え、午前中はレーンが素振りの練習をしてくれているものの、始まって数十秒後。
道場内一面に諦めの叫びが響き渡った。
「お、おい;稽古して欲しいとか言ったのはお前だろ?ほら、今やってる素振りが終わったら休憩していいから」
「俺が進んで言ったんじゃないけどなっ!!何か知らねぇけど気が付いたら勝手に成り行きでこうなってたんだからなっ!!!」
「分かった分かった…ほら、手を止めるな!残り三十回!」
「もう疲れたってぇぇええっ!!」
叫びが木霊する事約数十分。
ようやく素振りを終わらせたエクは重い足取りで道場から出て、縁側に俯せのまま倒れ込んだ。
「あー…もうダメだ…疲れた……手ー痛い。腕痛い。くっそ…俺をこんな目に遭わせた御幻は何処にいるんだよ…!」
「御幻さんなら今日は行きたい所があるって言ってたから帰るのは大体夕方になるって言ってたぞ?」
「は…薄情者だっ!!」
悔しそうに歯を食いしばりながら強く握った拳で床を数回叩いていると、目の前にお茶が満たされたコップが差し出された。
「まあまあそう悔しがるなって、まずはこれで休憩してろ。な?」
「!ありがと!!」
がばっ。と勢いよく起き上がり、ちゃんと座り直してから差し出されていたお茶を一気に飲み干した。
「ふはーっ!!あー…俺もうこのまま休憩しててぇな~…丁度良いお昼寝日和だしさ」
「だーめだ。まだ今日の分の特訓が終わっていないんだから昼寝はまた今度だ 確か午後からはサンとシーラが同時に見てくれてる予定だから… ちゃんと頑張れば何かお菓子ぐらい作ってやるから。な?」
「えぇー…俺のこの先の努力と特訓を比べたら何か釣り合ってない気がするんだけどそれ…」
口を尖らせながら駄々をこねるエクに、やれやれと言いたげにレーンは溜め息交じりの笑みを浮かべていた。
二人との交代まで時間が余ったので、縁側に腰掛けたまま他愛ない話を交わしていたが、早い目の昼食をしておきたいと言うエクの提案により二人は台所へと向かった。