夢より現れしは紅き退魔の剣

「たかが剣姫に対して君は優しいね。と思っただけだよ 自分達を狙っている子…なのに不思議だなぁって」

『目的を最優先に考えただけよ。それより、貴方の方はどうなの?』

「心配する必要はないよセフィリア。 僕もちゃんと動いている。ああだけど…君がもし僕の期待を裏切るような事があれば、直ぐに殺しちゃうからね?」

 淀んだ深緑の目を少しだけ細め、口角を上げてそう告げると、苦々しそうにセフィリアは下唇を強く噛んだ。

「君達はもう僕の期待を一度裏切っているんだ…だからもうがっかりさせないでね?君に与えた役目も忘れないで?」

わざと彼女の頬へ手を伸ばそうとしたが、全力で払いのけて足早に立ち去ってしまった。 その様子に彼はやれやれと言いたげに笑い、懐に入れていた薔薇と十字架がデザインされている金の懐中時計に目をやった

(ああもうこんな時間か……まあ良いか。朝までに帰れば怪しまれないし
それにしても…ここから一番近くにいる奴が水晶と思うと少し厄介だなぁ…ふふふっ。彼女には悪いけど、邪魔する様なら例え優秀な部下でも始末した方がいいからね。)

表情だけにこやかに微笑みながら窓際へと歩み寄り、そして空を見上げた。
少し曇ってはいるが、礼拝堂からは青白い月が見えた

「ふふふっ綺麗だなぁ。本当に綺麗な月だ…
 ねぇ、君も見ているかな…?」

寂しそう呟いてみるが彼の問いかけは虚空に消えるだけだった。
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