夢より現れしは紅き退魔の剣

道場へとようやく到着すると、鍵を閉めて貰っていた正門から入って帰宅し、彼女を一旦縁側で待機させて昔お泊りなどに使っていた空き部屋を訪れ、脱ぎ散らかした服や座布団。借りっぱなしになっていた本などの片付けを慌てて開始した。

(くっそー…こんな事が起こるなんて一切考えた事も無かったから掃除なんて一回もした事無いってのに…!!)

ドタバタと色んな部屋へとエクが走り回っている間。待っていた御幻は縁側に座って月明かりに照らされる桜を眺めていた。

(桜って…こんなに近くで見た事はあんまり無かったから何か新鮮…)

 時折風に揺れて散っていく花びらを見つめてていると、その近くで数羽の蝙蝠が飛んでいる姿が視界に入った。

(…さっきから蝙蝠が随分多く飛んでるわね…ここじゃ普通なのかしら?それとも……ううん、考え過ぎよね)

ふと頭に昼間の出来事が頭に過ったが、それは無いな。と頭を左右に軽く振って考えを払拭した。 そう考えているうちにエクの片付けが終わったらしく、ブーツを脱いで部屋の中へ入って行くと近くを飛び回っていた蝙蝠も何処かへ飛び去って行った。


 月明かりが照らす森の中を数羽の蝙蝠が飛び続けた。 似た様な景色が広がる森の中を進み続けていると、入り口前に仄かな明かりが灯されている礼拝堂前へと到着した。
入り口への扉は固く閉ざされているが、窓には幾つもヒビが入り、壁の至る所には葦が絡まり、見た目としては立派な造りであるが随分と寂れてしまっている。
到着した蝙蝠達が羽で帰宅した合図に扉を叩くと、中から黒い耳付き帽子を被った金髪の青年「リース=コンスレード」が出迎えてくれた。

『はいはい、誰かなー?…!おっかえり~セシリアにキッシュにリサ!お使いご苦労さん。どうや?頼まれていた子は見つかったか~?』

 お使いに出していた使い魔が無事に帰宅してくれたので、一羽ずつ順に撫でてやってから頭と両肩に乗せて室内へと帰って行った。
室内へ戻ると、直ぐに細い廊下がありその際奥の扉を開けると、広い礼拝堂へと到着した。 天井には明かりとしてあまり役立っていないシャンデリアが吊るされてあった。

最奥には数段ほど階段があり、その上には橙色の長い髪にナイトドレスの女性「セフィリア=ハートレス」が玉座に座り、その隣にはオーカー色の髪に頭と腰に蝙蝠の羽を生やした女性「レルク=アレクサンドリア」が控えていた。

 階段下には左目を隠した黒いゴスロリ調の衣装と右目を隠した白いゴスロリ超の衣装とのお揃いの服を着た紫の角と片方だけの翼を生やした双子の少女「麗姫」(レイキ)と「魅芭紗」(ミハサ)が座っていた。

 そして辛うじて設置されている椅子の近くには水色の髪を結晶の様な髪飾りでツインテールにした桜色の眠そうな瞳の色白い浴衣の女性「雪道 氷綺」(ヒョウキ)と黒いローブを深く被った深緑色の目をした青年が退屈そうに一緒に座っていた。
リースが蝙蝠を連れて帰宅した事を見たセフィリアは、蝙蝠の一羽に向けてこちらに来るように。と手を差し出した。
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