― An EvilPurify Ⅱ― 姫が為。捧げし互いの正義

 しばらくしてようやく気が済んだのか、ゆっくりと顔を上げると目は少し赤く腫れ、顔も赤く染まってしまっていた。 ゴシゴシと目元を拭って、やっと落ち着いた。と言いたげに微笑んでみせたが、しばらくして呆然と、疲れ切った様子のリオンの方を見ていたが、改めて現在の自分がどういう状況になっているかを冷静に分析してしまい、そしてあまりの恥ずかしさに彼女は絶叫した。
「気は…済んだか?」
「……Σ!!! キャーーーー!!!///」
(ガシャーーン!!)

そのせいで奥の方にいた医者が驚いてコーヒーのカップを落とし、何処からかドタバタと走る足音が聞こえたかと思うと、彼女の側近のコクレイが扉を蹴り開けて入室すると、目の前には真っ赤になった泣き顔と泣きついた時に包帯に滲んでいた血が微かに顔に付いていた事で、襲撃されたと勘違いされてしまった。
「!てめぇっ俺の支部長にっ!!」
「Σま、待ってコクレイ!」
 即座に剣を抜いて斬りかかろうとする彼女を止めようと間に入ろうとした時、それよりも早くリオンがベッドの隣に置いていた剣を取り出して、コクレイの喉元ギリギリへ躊躇いなく剣を突き立てた。
「早合点も良い所だな…全く」
「コッココ、コクレイ!!この人は私の…養成学校時代の先輩でっ!!これはその、私が泣きついちゃったせいで付いちゃったの Σレト先輩も剣を降ろしてくださいよ!!」
「え?先輩…?」
「う、うん…確か前に話した事あるでしょう?」
「……Σハッ!?Σす、すみませんでしたっ!!何も知らずに俺…わ、ワタシったら失礼な態度ばかり…」
慌てて深くお辞儀をして謝罪をした。一人称をちゃんと言い換えてはいるものの、慣れてはいないらしく言葉が安定しない。

「言われてみればお話は支部長からよく聞いていましたけどー…さっきから色々とスイマセンでした…本当に…話して貰うだけで見た事が無かったので…退魔師と言う事も知らずに馬車に放り込んだり斬りかかったりすみませんでしたっ…でも重傷そうなのに俺の剣より早く行動するなんて流石ですね!!」
 コクレイの瞳が期待と感動でキラキラと眩しい程に輝いていたので、若い頃に結構鍛え上げられたら嫌でも情景反射で…と心の中で呟いておいた。
 色々とあって忘れてしまっていたが、クロアはある事を思い出した。
「そう言えばレト先輩。人数申請の紙は受け取ったんですが…フレイアやメリアルの姿がありませんけど…二人は何処に…?」
疲れきった様な脱力の表情をしていたリオンの表情が、クロアの一言で一瞬にして険しくなった。
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