― An EvilPurify Ⅱ― 姫が為。捧げし互いの正義

医務室の扉を(かなり)強い勢いよく開けてしまったせいで、医者に驚かれてしまったが、先程コクレイから聞いた事を話すと、納得したように彼の元へと案内してくれた。
厚く引かれたカーテンをおそるおそる開けると、ベッドの上で不機嫌そうに座る彼の姿と彼の膝上で寝転がる金髪の少女の姿があった。
いつも着用しているケープは外してベスト姿になっているものの頭や胸部付近に巻かれている包帯が痛々しい 彼女の視線と存在に気が付き、ある意味でとても久しぶりに再会する二人だったのでお互いに驚いた様に目を見開いた。

「クロ…ア…?」
「レト…先輩…やっぱりレト先輩だったんですね!」
タッと駆け寄ると、ベッドの上に置いていた彼の手を掬ってしっかりと握りしめた。 懐かしい養成学校時代の先輩である彼にまた再開する事が出来た事に涙が出てしまう。膝の上に乗っていたローゼも、彼女の事を覚えているらしく手を振っている。

「私っ…ここの(Blue Rose)支部長になったんですよ!…レト先輩やアルバトロ先輩に会えるようにって……うくっ…ひっく…。会いたかったですぅうレト先輩ぃい!!」
「Σお、おいちょ。待っクロア…!!むぐぐぅっ」
リオンが重傷人だと言う事も忘れて、飛び込む様にして泣きついてしまい、その勢いで彼もバランスを崩し、ベッドの上に仰向けで倒れてしまった。
クロアが飛び込もうとする寸前の所で避けたローゼはそれを覗き込むようにして見て、手を叩いて大笑いしていたが、空いている手の指に力を込めてデコピンを構えられてしまったので、身の危険を察知し慌てて取り繕い、この場の対処法の指示をしてきた

(例えばだけど~頭でも撫でてみたら~?ほらこんな感じに ガンバ♪)
(他人事だと思ってコイツは…自分がそんな事した所でどうなると言うんだ…この場合は自分じゃ無くてアイツの方が…)
 天井を見上げたままの状態で色々対処法を考えては居たものの、どうも良いのが思いつかない。昔の事を振り返って思い出話に花を咲かせる事等今では絶対にしたくない。かと言ってリックやカインが一緒に居ない事についてだって話したくない。
結果的に何も話す言葉すら見つからないまま、仰向けになった状態の自分に縋りつき泣きつくクロアと隣で大笑いするローゼへ交互に視線を送って黙ったまま時間を過ごすしかなかった。
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