― An EvilPurify Ⅱ― 姫が為。捧げし互いの正義

ようやく全てが終わりを迎えたと言うのにリオンはまだ影の残る表情で馬車を静かに見つめていると、外の御者席に座っていたシルドラと馬車内からジークが慌てて馬車から降りて近寄って来たが、目の前の状況を見て二人は言葉を失った。
「…丁度良いタイミングだったな」
「リオン。アンタ…!病室や本部会議での事を忘れたのっ?!!イザヨイは生きたまま連行しろって…それを破ったらどうなるか…言ったでしょ…なのにっ」
「これが自分たちの出した結論だった。杖が破壊されたアイツに、それ以上何かを出来る事も出来ないから…支部に飼われる前に殺ってくれ。と自分は彼ら三人のや…トウカ君の為にもアイツの願い通り実行したまでだ…」
「お前は、それで後悔はしていないのか?」
「……。」
「っリオン…もう解っているだろうけれど…私達は本部支部長の命に従うしかないから…」
苦々しい表情だったが、必死に冷静さを保ちながら、彼へと近づこうとすると、その間にクロアが両手を広げて立ちはだかった。
「お…お待ちくださいっ!レト先輩を止められなかったのは…上司である私にも責任がありますっ!!こうなってしまったのは私の未熟さゆえ…ですから…ですからどうか…レト先輩を連れて行かないで下さいっ!」
「デルタちゃんっ…」
「クロア…」

 止められなかった自分にも責任がある。と必死に訴えていたが、それでもリオンは彼女の背後から離れてシルドラ達の元へと歩み寄った。
「行ってはなりませんっレト先輩っ!戻って来て下さいっ…私を置いて…行かないで」
懇願するような声に一瞬だけ足を止め、ほんの少しだけ振り向いた際に、被っていた帽子を彼女の頭へと乗せた。
「気持ちだけは貰っておく…だから、君に…それをお返しに渡すよ。アキも使っていたお古だけど」
「ですがこれ…レト先輩の…あっ!待って下さいレト先」
二人の間に少しの距離が出来、クロアが慌てて手を伸ばそうとした瞬間。地面が地響きを立てて揺れ始め、二人の間に山の様に大きくそびえ立った氷の壁が召喚されて、完全に二人は分断された。
「わざわざ御大層だね…」
「可愛い後輩ちゃんの前で…連れて行く事なんかできないわよ…それに、あんなにもアンタの事を守ろうとするなんて本当に良い子なのね」
「自分の中では、唯一自慢出来る後輩だよ…だけど、情に脆過ぎて優し過ぎるんだよ。時には…自分の事なんてもう……非情に切り捨ててくれたって良かったのに」
「あの様子を見ていると…よっぽど、お前の事が気に掛かっていたみたいだな。…そうじゃなきゃ、今頃もう切り捨てていただろうし…そっれをしないって事は、切り捨てる事が出来なかったんじゃないのか?」
「………。」
ジークの問いかけに対して気まずそうに無言のまま視線を逸らし、先に馬車へと乗り込もうとした時。氷の壁の向こう側からもう一台の馬車が到着する音が聞こえた。
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