― An EvilPurify Ⅱ― 姫が為。捧げし互いの正義

 自身が考えていた以上にクロアが戦える存在だった事に余裕の無い笑みを浮かべながら、速い目に片付けた方が良いと考え、呪文を唱えながら杖を地面に突き立てると三人の足元から紅く、そして鈍く光る針を無数に出現させた。
「これでは迂闊に近づけません…っ」
「だったら自分があの杖を抑えるから君がその間に…」
「!いえ、こうすれば良いだけですっ!少しローゼちゃんお借りしますが…!」
剣に繋がっていた棺桶との鎖を外してやると、クロアが自分の近くまで駆け寄った。何をするのだろうか?と疑問に思いつつイザヨイの攻撃を避けていると、クロアの服の袖から、先端に重りが付いた長い鎖が伸ばされ、支柱部分へと巻き付けられた。
『くっ…たかが…杖を防いだ位で…』
巻き付けられた鎖を解こうとされた時。ローゼにも手伝って貰って共に鎖を手前に引いてそれを阻止すると、その隙にリオンが持っていた剣を一気に薙ぎ払うと、イザヨイの肩と胸部が大きく斬り裂かれた。
 鮮血が目の前で飛び散り、受けた傷により息が荒くなり、痛みで視界が眩む。足元がよろめいて膝を付いた時。彼の首元へリオンの持っている剣が向けられた
『…やは、り…二人と…亡霊一体と一人では分が悪い。…と言うものですね…』
「これでもう終わりですよ…ミコトさん。…貴方は…このままRainbow Rose総本部支部へ連れて行きます」
『支部に…ねぇ……ですがこの程度で、ワタシは終われる訳には行かないんですよっ!』

 総本部支部。と言う言葉を聞き、苦々しそうな表情で少し考える様に俯いていたが、不意に顔を上げると、首元へ向けられていた剣を手の甲で跳ね退け、鎖が緩んでいた隙にもう一度杖を構え直し、呪文と共に杖を地面に突き立てて紅く光る針を直ぐ傍に居たリオンに向けて出現させた。
「!っ危ないっ!!レト先輩!」
慌てて直ぐに身構えたが、もうすぐで首が一突きされる。その寸前だった。彼を狙っていた針はピタリと止まり、砂の様に消えて行った。
何が起こったのか不思議に思っていると、イザヨイの杖にある水晶部分にはクロアが投げたと思われるナイフが深く刺さっていた。
『そん…な。杖が破壊されたと言う事はっ!!』
 水晶部分に刺さったナイフを抜きながら、珍しく激しく動揺する彼に疑問を抱いていると、木陰で休ませていたマリアネットに異変が起こった。
先程まで人形の様に黙ったまま動かない筈だった彼女は顔を覆う様にして俯き、ガタガタと身体が震え始めた。

『マリーっ!嗚呼…マリー…』
 異変が起こった彼女の元へ即座に駆け寄って抱きしめたが、彼女の体の震えは治まらず、顔を上げた時には水晶部分に起きたヒビと同じ物が彼女の顔へ入っていた。
『ああっ…ああぁあああっ!!!』
しっかり抱きしめていても入ったヒビが治まることはなく尚も彼女を蝕み続け、突然大きく仰け反って叫び出したかと思うと、足元から徐々に彼女は崩れ始めた。
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