― An EvilPurify Ⅱ― 姫が為。捧げし互いの正義
ヴァレンチノの援護によってジークは怪我無く済んで地面に着地すると退避行動を即座に行い、怒り狂ったトレイタが、まだ胴体上にいた彼女に向けて肩に牙を突き立てて一気に斬り裂き、その反動で足を滑らせた彼女は地面へ落下した。
牙が当たって大怪我をしたのではないか?!と思い、青ざめた表情でシルドラが叫んだが、地面にぶつかる寸前の所で受け身を取って着地し、後ろへ数回跳躍しながらシルドラの元まで退避した。
「あ、あれ?チノ!怪我は平気だったの?!」
「服が裂かれただけだ。私自身に怪我はない だが…このままでは埒が明かないな。シルドラ、魔法でアイツを一瞬だけ止めろ。その間に…私とジークで奴の首元を狙う」
「そう言う事ならお任せあれっ!」
了解の意を込めて大きく頷くと、鞭剣の射程範囲であるトレイタの尻尾上まで移動し、鞭剣を一気に伸ばして口元へと巻き付け、その動きを抑えつけた。
「大人しく…っしててちょうだいよ?!!」
めいっぱいの力を込めて鞭剣を引くが、それでも尚頭を振って激しく抵抗されて鞭剣の根元が軋む。
「っんの…良いから大人しくしてなさいっ!!」
言葉が終わると同時に、シルドラの白眼部分が黒く染まり、金色に光っていた瞳は血の様に真っ赤に染まると、鞭剣の先端が凍り始め、瞬きするよりも早く伝い、瞬時に巨大な氷のレールとなった鞭剣がトレイタの口元を抑え付けた。 身動きが取れず怯んでいる隙に二人は駆け出し、先程シルドラが斬った腹付近まで辿り着いた時。少しだけ空けた手を使って魔法で地面を盛り上げて途中まで坂道を造ってくれた。
「くぬぬぬぅ…!!お二人とも!頼むわよっ!」
「解っているっ!」
「よっし、任せろ!」
造って貰った坂道の頂上で一気に跳躍し、ヴァレンチノは愛用の白銀の刀身を持つ剣を。ジークも白銀の刀身を持つ剣を構え、二人はトレイタの首元めがけて×を描く様に一気に斬り裂いた。
断末魔の様な叫ぶ音がトレイタの口から洩れ、斬られた傷からは鮮血が雨の様に降り注きながらトレイタは地面に勢い良く倒れた。
これ以上はもう戦う事は出来ない。と判断し、大人しく眼を閉じようとしたが、脳裏を過ったマリアネットの姿にハッとした様に眼を見開いた。
イザヨイの命に従う事は不本意でもあり、以前暮らして居た様な魔物でも安心して暮らせる温かい光のある世界を取り戻す為に…マリアネットを利用する目的で契約した筈だった。 だがいつの間にかマリアネットと居るのが当たり前で笑ってくれるのなら、喜んでくれるのなら構わないと思っていた。
そう思っていたのに…
(我はもうこれ以上は無理のようだな…)
徐々に視界が霞んで行き、意識が遠のく。
内心で何回もマリアネットの事を考え、最期まで一緒に居られなかった事を謝罪しつつトレイタは眼を閉じた。
彼の周りから黒い煙が上がり、徐々に身体が地面へ吸い込まれていく中。大きな突風が吹き、周りの木の葉が数回揺れ、先端に付いていた彼の血液が眼元に当たって一つの筋を作った。
それはまるで涙の様でもあり、トレイタのマリアネットに対する最期の思いを表現しているかの様にも見えたのだった。
牙が当たって大怪我をしたのではないか?!と思い、青ざめた表情でシルドラが叫んだが、地面にぶつかる寸前の所で受け身を取って着地し、後ろへ数回跳躍しながらシルドラの元まで退避した。
「あ、あれ?チノ!怪我は平気だったの?!」
「服が裂かれただけだ。私自身に怪我はない だが…このままでは埒が明かないな。シルドラ、魔法でアイツを一瞬だけ止めろ。その間に…私とジークで奴の首元を狙う」
「そう言う事ならお任せあれっ!」
了解の意を込めて大きく頷くと、鞭剣の射程範囲であるトレイタの尻尾上まで移動し、鞭剣を一気に伸ばして口元へと巻き付け、その動きを抑えつけた。
「大人しく…っしててちょうだいよ?!!」
めいっぱいの力を込めて鞭剣を引くが、それでも尚頭を振って激しく抵抗されて鞭剣の根元が軋む。
「っんの…良いから大人しくしてなさいっ!!」
言葉が終わると同時に、シルドラの白眼部分が黒く染まり、金色に光っていた瞳は血の様に真っ赤に染まると、鞭剣の先端が凍り始め、瞬きするよりも早く伝い、瞬時に巨大な氷のレールとなった鞭剣がトレイタの口元を抑え付けた。 身動きが取れず怯んでいる隙に二人は駆け出し、先程シルドラが斬った腹付近まで辿り着いた時。少しだけ空けた手を使って魔法で地面を盛り上げて途中まで坂道を造ってくれた。
「くぬぬぬぅ…!!お二人とも!頼むわよっ!」
「解っているっ!」
「よっし、任せろ!」
造って貰った坂道の頂上で一気に跳躍し、ヴァレンチノは愛用の白銀の刀身を持つ剣を。ジークも白銀の刀身を持つ剣を構え、二人はトレイタの首元めがけて×を描く様に一気に斬り裂いた。
断末魔の様な叫ぶ音がトレイタの口から洩れ、斬られた傷からは鮮血が雨の様に降り注きながらトレイタは地面に勢い良く倒れた。
これ以上はもう戦う事は出来ない。と判断し、大人しく眼を閉じようとしたが、脳裏を過ったマリアネットの姿にハッとした様に眼を見開いた。
イザヨイの命に従う事は不本意でもあり、以前暮らして居た様な魔物でも安心して暮らせる温かい光のある世界を取り戻す為に…マリアネットを利用する目的で契約した筈だった。 だがいつの間にかマリアネットと居るのが当たり前で笑ってくれるのなら、喜んでくれるのなら構わないと思っていた。
そう思っていたのに…
(我はもうこれ以上は無理のようだな…)
徐々に視界が霞んで行き、意識が遠のく。
内心で何回もマリアネットの事を考え、最期まで一緒に居られなかった事を謝罪しつつトレイタは眼を閉じた。
彼の周りから黒い煙が上がり、徐々に身体が地面へ吸い込まれていく中。大きな突風が吹き、周りの木の葉が数回揺れ、先端に付いていた彼の血液が眼元に当たって一つの筋を作った。
それはまるで涙の様でもあり、トレイタのマリアネットに対する最期の思いを表現しているかの様にも見えたのだった。