― An EvilPurify Ⅱ― 姫が為。捧げし互いの正義

先程まで自分を狙って一直線に向っていた筈のトレイタが急に暴れ出した事を不思議に思いつつ恐る恐る後ろを振り向くと、目の前に左手が差し出された。
「遅れてごめん。途中でトウカに会って避難促したり白薔薇さんに支部長バトンタッチしたり…助っ人に連絡とかしてたら遅れちゃってさ」
「…遅いわよバカ……それより助っ人って??」
「さっき自分がトレイタの角を抑えてる時、ボウガンで援護してくれたシルドラのよく知ってる人」
「それって…」
自分のよく知っている人物と聞き、差し出された手を持って立ち上がると、木の上から肩に掛かる程の白髪交じりの赤い髪にややつり眼な金色に光っている瞳と白い軍服に似た服の腰にはいくつかの武器が装備され、その上に茶色いローブを羽織った女性「ヴァレンチノ=レト」がボウガンを背負ったまま降りて来た。
彼女の姿を見た途端。先程まで張り詰めていたシルドラの表情が破顔した。
~~っ!チノ~!!チノ!
久しぶりに会った同僚に感極まって飛びつこうと飛んだが、無言のまま簡単に避けられ、軽く木へと激突した。

「Σきゃんっ!ひ、ひどいチノ…折角久しぶりに会ったのに抱擁の一つもしてくれないなんてっ!」
「助けに来てやったのに…文句が多い所は何一つ変わって居ないようだな」
「そんなにハッキリ言わなくたって…それよりチノ、ここまでどうやって…?」
「少し前にジークから連絡があってな。貿易の途中だったが…急いで馬車を走らせて来てやったと言う事だ。 浄化が終われば特急料金として店の掃除をして貰おうかな?」
「代わりに新しく剣を新調するからそれで勘弁して欲しいんだけどなー…さて、自分達もシルドラみたいにそう若くないから長期戦にならないようにするぞ」
ジークの声掛けに二人は静かに頷くと、ヴァレンチノはボウガンを投げ捨て、腰に装備していた銀色の刃をした手斧へと持ち替えた。
 それを合図にシルドラがもう一度魔力を手元に込めて空へと放ち、落下する氷柱を暴れるトレイタに向けて落とし、それに気が取られている隙に尻尾へ先程よりも巨大な氷柱を落として突き刺し、動きを封じた。
封じられた尻尾の上を二人が同時に走って登り、頭と角を目指した。
「私は角を狙う。お前は口を塞げ!」
「ん、了か…いや、やっぱり反対じゃダメ?前にコイツのせいで腕無くなったし…」
「…そうだな。じゃあ私はいつの間にか治っている目を狙う」
 途中で互いの狙いを変更し合い、胴体の途中まで登ってから先にジークが角を狙ってジャンプして剣を振り下ろそうとしたが、その瞬間を狙ってトレイタの口が大きく開けられた。
「Σこ、こいつっ!!」
軌道を変えられる事も無くもうすぐで口の中に飛び込んでしまいそうになったが、その寸前でヴァレンチノが持っていた手斧が投げられてトレイタの右目へ直撃した。
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