― An EvilPurify Ⅱ― 姫が為。捧げし互いの正義

 時は一度遡り、会議室内でソヴァージュとの戦闘が行われていた同刻。Rainbow Rose総本部支部の建物から少し離れた薔薇園付近ではトレイタをシルドラが一人で抑えていた。
「あの時浄化したってのに復活しやがってっ!ジークは待ってても遅いし…!これ以上この辺り一帯破壊されたら修繕に駆り出される……!くらえ【アイシィクル・レイン】」
手元に青白い魔力の塊を生み出し、彼女はそれを一気にトレイタの頭上へ放った。そして直ぐに彼の上からは無数の氷柱がまるで雨の様に降り注いだ 的が大きい事もあってほとんどの氷柱が当たったが、自身を貫く様な巨大な物は全て頭の角で砕かれてしまった。

「くぅぅう…!前は刺さって動きも止めれたのに…こうなったら正面から正々堂々直球勝負!」
以前の頃とは違って簡単に交わされた事に苛立ちつつ、ローブの腰元に付けている白い布の中から柄の部分に金色の薔薇の装飾が施された刃の部分が蛇腹型になっている鞭剣を取りだし、地面へと叩きつけた。
「魔法が効かなくってもまだこっちがあるわよ…!てやぁあっ!!」
鞭剣をしっかりと握り直し、一気に駆け出した。 彼女に向けて尻尾が叩きつけられるのを避けながら走り、表面の硬質な鱗を狙わず、比較的に柔らかい腹の辺りにまで辿り着くと、その場で跳躍し、鞭剣をしならせて一気にトレイタを斬り裂いた。 比較的鱗が弱い部分を斬り裂かれ、傷口からは大量の鮮やかな鮮血が飛び散った事で辺りは赤く染まっていた。
 尻尾を振り乱しながら激しくのけぞりトレイタから悲鳴のような音が鳴ったのを見て、このまま押して行けば大丈夫。と思い、追撃をしようとしたが、もう一度腹の部分へ飛び込んだ瞬間。彼女が鞭剣を振るうよりも先にトレイタが角の平たい部分を突進させて一気に彼女へ叩きつけようとした。
「やばっ?!【コール・ド・ウォール】っ!!」
角が直撃する寸前に氷の壁を使って防いだので直撃は免れたが、それでも相手の巨体による突進では完全に防ぐことは叶わず、勢いよく遠くへと飛ばされ、地面にへと叩きつけられた。
「かはっ…った…。やっぱ…流石に私一人じゃ難しいかも…」

叩きつけられた衝撃に、げほげほと咳き込みながらよろよろと立ち上がったが、隙だらけだった今がチャンスと思い。トレイタの追撃が始まった。 先程斬られた傷が当たる事も構わず、シルドラに向けて大口を開けて突進し、慌てて逃げる彼女を丸のみしようと追いかけた。
「うそうそうそでしょ?!!やだっ!やめっ!!私なんか美味しくないから!!退魔師と魔物のハーフなんて絶対毒だからっ!」
息を切らしながら走り続けたが、途中で木の根に躓き、膝から転んでしまった。
「わっ?!!いったぁぁっ……はっ!やややばいっ…」
 早く逃げなければ!と立ち上がろうとするが、転んだ際に出来た傷が激しく傷んでそれを妨害する。その間にもトレイタは角を構えて自分の元へと突進している。 どうすべきかと俯きながら考えた時、今はまだ不在中のジークに向けて叫んだ。
「…けなさい…助け…何処にいるかは知らないけれどっ!同僚がピンチなんだから早く助けに来なさいよ!ジークっ!!

いつ来るかも分からない相手に対して言うのは無駄な事は解っている。だがそれでも一欠片の望みに縋って叫んだ。が、声は虚しくその場に響き、角が叩きつけられそうになった瞬間。一つの影がそれを剣で防ぎ、もう一つの影がトレイタの背をボウガンで4発撃ち貫いた。
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