― An EvilPurify Ⅱ― 姫が為。捧げし互いの正義

 しっかりと握られた手からソヴァージュの手が力無く落ち、もう一度握り直そうとした時彼女の身体が光に包まれ、そしてトウカの腕の中で徐々に消え始め、宙を舞いながら光の欠片にとなって消えて行った。


    ―バイバイ…トウカ―

 ―魔物だったボクと友達になってくれてありがとう―

    ―誰よりも大好きだったよ。
        だからもう泣かないで…―


完全に浄化されてしまったソヴァージュを見送った後。室内には完全と言う程の静寂が訪れたが

「うっ…うぁあああああっ!!!」

彼は泣いた。
只ひたすらに声を出して泣き続けた。
その場にいる誰もがトウカに掛けられる言葉も無いままその場に立ち尽くしていた。


 側近が無残に殺され、姉から託された思いと飼い主としての思いを遂げた筈のヒガンも浮かない顔だった。 彼女の『これは報いなんだと思う』と言っていた言葉を思い返し、これで自分も向こうも本当に救われたのだろうか…?との考えが過ったが、直ぐに払拭してトウカの頭に手を置いた。


「いつまで泣いてんだ…。…オレ様の勝手な思い込みかもしれねぇが、アイツは浄化されて救われたんじゃねぇかな?…」
「俺もそう思うっす…上手くは言えないけど…浄化される事が今までして来ちゃった事の償い法だったんじゃないかなー?って…で、でも俺!今まで色々魔物浄化してきたっすけどあんなに綺麗な消え方無かったからきっと ね?!」
「Σお、おう…また人に…とか何とか言ってたから…要らねぇ部分はちゃんと消えて…また人になれたんじゃねぇか?…?」
「…い。…はい。 僕もきっとそうだと思います…それに、ソヴァージュとの約束もあるので、もう大丈夫です」
『オイラ、ソヴァージュとやくそくした!トーカまもるって!!』
「うん…。……あ!それより今すぐ救護班の人呼んできますねっ!!ガイア!!」
 流れていた涙を袖でしっかりと拭い、二人にもう大丈夫と言う思いを込めて笑って見せたが、慌ただしくガイアに飛び乗ると救護班を呼ぶためにと走り去った。

「いや~元気になってくれて良かった良かったですね~!」
「はぁ…疲れた。やっぱりコレ(刀)は使いにくいな…おい、返すぞ」
「え?Σあっぶねぇえ!!?ちょっとまておい!幾らなんでも返す。とか言って投げる奴がいるかっ!刺さったらどうす…ってかちゃんと洗って返せ!」
「はっはは。…ば、かにされてますね~しぶちょー」
 ソヴァージュとの一戦を終え、会議室内にいる全員は疲れ切った様にその場に座り込み、重症のフォルカスは仰向けに寝かせてておいて、救護班が来るまで皆はそれ以上何か話す事はしないで疲れきった様子で眠る様に目を閉じて待機する事にした。
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