― An EvilPurify Ⅱ― 姫が為。捧げし互いの正義

 マリアネットとの戦闘後。“T”Sheolから一人帰宅したリオンは、先程まで戦闘が行われていたBlue Roseの管轄内にある湖の湖畔に辿り着いていた。
“T”Sheolへ移動する前までは昼間だった時刻も、帰宅した時にはいつの間にか辺り一面は真っ暗になり、空には星が輝いていた。 最初は驚いた様に辺りを見回していたが、つい先ほどまで一緒にいた「リック=フレイア」「カイン=メリアル」達は「きっと一緒に帰る」と言っていたので彼はそれを信じて待つ事にした。

 ―カラーン カラーン―と何度目かもわからないBlue Rose支部が時間を知らせる。
支部の近くにある湖の湖畔では額から血を流し、黒のケープを付けた衣服も傷ついた毛先のみ赤い銀髪の青年「リオン=レト」は、あれからずっと湖畔に座り込んだまま動こうともしない。
時折彼の背後にある白く大きな棺桶を媒体としている闇の様に黒い肌と輝く長い金髪に水色のワンピースを着た少女「ローゼ」は、少しでも気を惹こうと袖を引っ張ったりするもののどれも失敗に終わっている。
(リオン。そろそろ支部に行こ?多分その…あの二人なら帰ってくるよ!だってそう約束したんだし…)
「まだだ…もし彼らが戻って来てその場に自分が居ないのは嫌だ」
(だけどデルタっち待ってるよ?)
 困った様にその場で両手を上下に大きく振って急かしていると、二人の背後から馬車が走る音が聞こえ始め、その音は丁度彼らの背後で止まった。
不思議に思って互いに視線だけを背後に向けると、白と黒の二頭の馬を操っている白い軍服に黒い髪の女性と目が合うと、彼女は一旦馬車から降りて声を掛けて来た

「よっと…朝早く湖にお散歩ですか?お兄さん …ってお、おい大丈夫か?乾いてると言っても額から血も出てるし…怪我も酷いじゃないか… あ、俺はコクレイ。コクレイ=ラングドリーヌ 直ぐそこのBlue Roseで特攻隊長と側近やってる退魔師なんだ。ほらこれ金時計
 えっと…自力で立てるかい?丁度支部に帰る所だから手当てしてやるよ」
「自分はいい。この位なら平気だ」
「そう言うなって!支部の医療は結構最先端だし、“一般人”を保護するのだってRose隊員の役目だからな」
(確かにコクレイ?の言うとおり怪我も酷いんだし…ついでに行ったら?)
「だから自分は…!?っておい放せっ!」
差し伸べられた手を払おうとしたが、先に腕ががっしりと掴まれてしまい馬車へと放り込まれてしまい、その後からローゼも一緒に入れて貰ってから、馬車は何事も無く発車してしまった。 

観念したように仕方なく椅子に座り直し、周りの景色に視線を移す。
現役の頃に何回か訪れた事のあるあの時の景色のままで、珍しさも特に無かったが、唯一違ったのは門をくぐった先にある薔薇庭園が以前よりもかなり手が施されており、一面が満開の青い薔薇で整えられてあった事だった。
「この薔薇庭園はさ、他にも支部五つあるんだけどそれぞれの支部で咲いてる色が違うんだぜ?例えばGreen Roseなら緑とかRed Roseなら赤とかな お、そうこう言っているうちに到着だぜ!支部長には俺から後で言っておいてやるから先に医務室に行くぞ」
 派遣部隊だった事もあるので色んな支部には行った事があるので、それぐらいの事は知っていたので適当な返事をしていると、門番と御者を交代したコクレイにより馬車のドアが開けられ外へと連れ出され、半ば強制的に支部内へと連れて行かれてしまった。
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