― An EvilPurify Ⅱ― 姫が為。捧げし互いの正義

 しばらく様々な角度から写真を撮り続け、気が済んだ辺りで恍惚とした表情でカメラのデータを見ながら辺りを見回していたが、しばらくしてその表情を少し曇らせた。
「エトワル様の良い写真…たーっくさん撮れましたのに…今日はルクトが居ないんですね。いつもの様にお互いに見せ合いっこしたかったのに…」
「リュミエール。おて」
「!ワン♡」
紅茶を飲みながらもう片方の手を出し、犬の様に命令すると、嬉しそうに彼女は彼の小さな手の中に(カメラを持ったまま)両手でおてをしたが、その隙にカメラが奪われ、無言のまま先程のデータが全消去され、そして返された。
Σきゃぁぁあ!!私の大事なエトワル様がぁあっ!!
「うるさい。今度から器をペット皿に変えられたくかったら手を放せ。要らない思考が流れてくる」
「うぅ…ひっく…(今日の分の)エトワル様コレクションっ……でもそんな暴君な所もイイです。」
目元を多少潤ませながら彼の手をしっかりと握っていたが、振り払われ向こうに行けと言わんばかりに手で追い払われてしまい、渋々後ろで待機していると、会議室の扉が二人のRose英雄によって大きく開かれた。

 一同が突然の事で動揺する中。その中央を車椅子に乗ったやや黄み交じりで短く白い髪に藍色の眼。顔には深い皺と口元と顎にヒゲを蓄え、深緑色の軍服に藍色のマントを羽織った老人はRose“T”truthful Rainbow Rose総本部支部の支部長である「アーネスト=トールグルーナー=エルフェスゴート」が白い軍服に白い髪。目元のみを隠すかの様に付けられた赤い仮面の青年によって移動し、席へと到着した。

アーネストの登場により先程までの空気は一変し、物音をたてる事も許されない様な重苦しい空気の中。扉を閉めた二人もアーネストの後ろへ移動して一息吐こうとした時。シルドラがふとクロアの方を見ると、居るはずの無いリオンと眼が合い、顔が強張ってしまったが現在の立場上。どうにか出来る筈も無いので「頼むからこの会議中は何も言わないで」との意味を込めて小さく口元に人差し指を当てておいた。
先程の青年が中央が空いている机の中へ移動し、それぞれ指定の椅子に座る支部長の顔を確認してから彼はその場で深く一礼をした。

『それでは、皆様お集まりのようですのでこれより『全支部長召集型緊急会議』を行います。 進行は私。Rose“T”truthful Rainbow Rose総本部支部長補佐『グレア=シャトー』が行います
まず、皆様はRainbow Rose総本部支部特殊部隊と言うものをご存じでしょうか?』
淡々と語るグレアに対し、割と支部長中でも古株であるジュウザが代わりに答え始めた。
「本部…お爺様の為だけの駒の事でしょう?魔物殲滅に護衛。確か暗殺部隊と合同の」
『ええ、そうです。では…その暗殺部隊長による部下全員の抹殺。及びマリアネット側へ寝返った事は?』
「そんな事もあったわね。でも…彼はその後に確か行方不明となって居た筈でしょう?“猟犬”を放っても見つからなかった。…それがどうかしたの?」
『その彼『イザヨイ=ミコト』様が生存しているとの事が解りました』
その言葉に驚きや無関心言葉に出来ない憤りや悲痛。といった風に反応は様々だったが、構わずにグレアは只機械的に話を進めた。
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