― An EvilPurify Ⅱ― 姫が為。捧げし互いの正義
あの戦いから数日経った緊急会議の日の朝。
シルドラに無理を言って医務室から普通の部屋を用意してもらったリオンは、いつもと同じ朝を迎えた筈だったが、その表情は普段と違って冴えない。
今日行われる緊急会議のせいか。もしくは何かが起こるかもしれないと言う妙な感覚のせいか。
どちらにしてもさっさとこの考えを払拭しようと備え付けの浴室で軽くシャワーをしてからいつもの服に着替えていた。
途中。両手に黒い手袋を付け、腰部分にドレス風の黒い布とズボンとロングブーツを身につけてからベッドに腰掛け、頭からバスタオルを被ったまま一息を吐いた。
(?どしたの?着替えないの?)
「ん?ああ、いや…ちょっと疲れたなーと思ってな。こっちの部屋に移動する。と提案しただけで永遠シルドラに説教されて…ま、会議には参加できないと言っても内容は彼女が教えてくれるんだ。それまで待機するとしよう」
(そう言えばそうよね~。だって怪我…完全に治ってないんでしょ?)
背中から腰にかけて斜めに斬られた大きな傷を触れながらそう問いかけると、彼は無言のまま首を横に振った。 でも。と言葉を付け足そうとした時。部屋の扉がノックされ、向こう側からクロアの声が聞こえた。
「レト先輩。クロアです…少しよろしいでしょうか?」
(Σデルタっち?!!)
「Σローゼ!ケープかベストか…何でもいい上に着るもの取ってくれっ! ああ、ちょっと待ってくれクロ…」
「え?急ぎの用でしたのでもう入って…」
慌てて何でもいいから上を着ようとしたが、一歩遅く。何も知らずに部屋へ入室してしまったクロアと眼が合ってしまった。
「Σキャァァアア!!///♡」
「見るなぁぁあっ!!///」
「ははは、早く服をっ!上を着て下さいっ!//わ、私はちゃんと目隠ししてますからっ!!」
「だ、だから待てって言おうとしたのにっ;!!///」
互いに真っ赤になりながらクロアは手で目元を(隙間ありで)押えて隠し、その間にリオンは急ピッチで着替えを終了させた。
「うぅ…朝から素敵なものを♡…あ、いえ。驚くものを見ちゃいましたが…レ、レト先輩にお願いがありまして」
「もう言うな…。それで、お願いとはなんだ?」
「実は…本日の会議にレト先輩は私の側近代理として出席してほしいのです。」
「え…?」
さっきまでの騒がしかった雰囲気は消え、クロアの言葉によりその場は急に静かになった。 突然の提案に目を丸くしていると、クロアは続けて説明した。
「数日前…シルドラ様たちに保護して頂いた後。私は支部長専用の部屋にいました。その時、コクレイが傍で励ましてくれていたのですが…その日の朝。会議準備をーと考えていたのですが…コクレイのお父様である本部支部長秘書をしていらっしゃるグルワール=ラングドリーヌさんと出会って…そこで父娘喧嘩が勃発してしまって…」
「それで彼女はグルワールとかいう人に連れて行かれて、自分は代理ということか…そうして考えると…彼女も不憫だな;」
「私の事で手が一杯だったので…改造している制服を着替える事を忘れていたのも原因なんでしょうが…ほら、中々勝気な子ですからついつい…」
「…ああうん、何となく解る気がする;。それより、そろそろ会議室に向かった方が良いな」
現在は不在中のコクレイの身を案じながら、二人は身分証明の金時計で時間を確認し、ローゼを棺桶に片付けてから一気に背負い、部屋を後にした。