― An EvilPurify Ⅱ― 姫が為。捧げし互いの正義

 意識を失った後。リオンは、辺り一面真っ黒な場所を彷徨い歩いていたが、いつの間にか目の前に帽子を被った翡翠色の髪をした赤い眼の青年が立って居た。

自分の知っている変わらないあの時のままの姿で。

「何だよリオン、まだ寝てるのかよ」

笑いながら彼に言われた彼の言葉に、普段通り冷たく返してしまいたかったが、彼のその言葉が妙に懐かしく心地良かった

「早く起きろよ?みんな待ってるからさ!」

只それだけを伝えると彼はこちらに背を向けて歩き出した。
 何度も何度も彼の名前を呼ぶ。だが彼は振り返らない 軽く手を振ったまま遠くへと行ってしまう 待ってほしかった。行かないでほしい。ようやく再会できたのだから
 だからもう、どこにも行くなアキ。自分を置いて



その言葉も願いも届く事はなく、突然眩しい位の真っ白い光が現れたかと思うと、リオンはようやく眼を覚ました。
「アキっ!!」
「えっ?!」
(わっ?!!)
 さっきまで呼びかけてくれていた彼の名を呼びながらガバッと上半身部分だけを起こして起き上がると、そこは見慣れないカーテンに仕切られた医務室と、誰かに治療された後のある自分。包帯を巻いたローゼ、そしてアキとそっくりな容姿の少年がそこにいた。
「ここは…?確かさっきまでイザヨイが…?ん?でもアキが今…」
 記憶が混乱しているのか何があってここにいるのかと考えようとした時。感情を抑えきれなくなったローゼが彼に飛びつきそうになったが、そこは隣に居た膝丈程の白いコートに七分丈の黒いズボンとローファー姿の翡翠髪に紅い眼の少年「トウカ=ミラージュ」が全力で止めてくれた
「Σだ、だめですよローゼさん!今飛びついちゃったらさっきやっと僕の回復魔道書塞いだ背中の傷が開いちゃいますから;」
(そんな簡単に開かないわよ!(多分)えーい!もう放してよー!伝えたいこといっぱいあるんだもんんっ)
布団の端を叩いて「放せ」と抗議するので、どうしたら良いかと困惑し始めたトウカに、少しだけなら大丈夫。と慌てて付け足すと、ようやく自由になったローゼが膝上に飛び乗り、強く抱きしめた。

(リオン…良かった!呼んでも呼んでも返事無いからダメかと…)
「いたたた;…うん。悪かった…でも何でか夢に出て来たアキが起こしてくれたから平気だって それより…ひ、久しぶりだねトウカ君。元気そうだね 君がここにいるって事は…本部か」
「はい!お久しぶりです… えっと…リオンさんも……か、変わらない…?げんき…?;そうです…ね?; あ、母さんはアーネスト様の元へ報告に行ってまして…ジーク様はクロアさんやドレスィドさんの方で色々と…それで僕はこちらにろと言われて」
 
 お互いに久しぶりに会うので話したい事は山ほどあったが、互いに気まずそうに視線を逸らし合ったまま話はそこで終了となった。
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