― An EvilPurify Ⅱ― 姫が為。捧げし互いの正義

 投げられたマフラーをローゼにキャッチさせて確認して言葉を詰まらせた。一部破れたり乾いた血液が付着しているが、裾にあるRoseのエンブレムが彼らの所有物だったと言う事を物語っていた。
信じていた物が根底から崩される様な衝撃が一気に前進を駆け抜け、二つのマフラーを握ったままその場で膝を付くリオンの元へ、トレイタから降りたイザヨイが更に追い打ちをかける為に言葉を紡ぎながら近寄った。
『コレが…貴方の招いた結果なのですよ?一人だけでも犠牲にしておけば彼は助かったのかもしれないのに…あの時貴方が二人にマリーの相手を任せていなかったら二人を救う事だって出来たかもしれないのに… ねえレト先輩。今はどんな表情をしていらっしゃるんですか?自分が見捨てたせいで死んだ二人の形見を持つ貴方の顔は……っ!?』
 心底楽しそうに口角をニィッと上げながら不安定な足場である瓦礫の上まで進み、徹底的にまで希望を崩されて絶望に染まったであろうその表情を確認しようとわざとらしく覗き込もうと上半身を屈めた時。空いた手で握られていた剣が無言のまま一気に振り上げられ、斬られた頬からは一筋の血が流れた。

『ふっははは!!やはり…やはり貴方はそうでなくては!その帽子の持ち主は貴方を守って。お揃いのマフラーの子は貴方に醜い姿を見られたくなくて…!たかが三人程度の犠牲如きで壊れてしまってはこちらが困っていましたが…どうやらレト先輩もワタシと同意見な様なので丁度良い。貴方にはマリーと同等の苦しみを味わって貰うつもりだったからなぁ!!』
 怒気を孕んだ口調と共に金色に輝く眼をカッと大きく見開き、手にしていた両手の手袋を外し、頬から流れる血液を軽く拭って杖の水晶部分へと滴らせておいた。

「その減らず口をいい加減黙らしたらどうなんだ…。彼らの事を何も知らないお前はこれ以上憶測で喋らなくていい!!お前はっ…お前はここで自分が斬り伏せる!」
改めて剣を持ち直し、不安定な足場の中。力任せに何度も斬りかかるが、動揺と怒りで冷静さを失っている今の彼の攻撃を避けるのは容易いのか、全くと言って良い程に攻撃は当たらない。
剣での攻撃にしびれを切らしたのか、ローゼの棺桶を構えた時。ようやくショックから我に返ったクロアがリオンに制止を求めた。
「お待ちくださいレト先輩っ!ミ、ミコトさんの口車に乗せられて冷静さの無い今。戦闘は無謀です!!一旦引いて下さい!」
『おやおや…ダメですよ?クロア嬢。外野の貴女は…少し黙っていて貰いますよ。トレイタ!』
トレイタの名を呼びかけると、それに応じてトレイタの尾がクロア達とリオンの間を分断するようにして振り下ろされ、視界も距離も分断されてしまった。
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