― An EvilPurify Ⅱ― 姫が為。捧げし互いの正義

 広間へ到着すると、シャンデリアが片付けられた場所まで移動すると手にしていたチョークで大きな円を二つ書き、それが終わると左手の常に付けていた白の厚い革手袋を外した。
その手の平と甲には現在地面に書かれている方陣と同じ様な印が刻まれてあり、右手の甲の方を確認しながら同じ文字をその場に書きこんで行き、最後に円の中心へ六芒星を書いて完成した。

後はソヴァージュの帰宅を待つだけだったので近くの瓦礫に腰を下ろして待っていると、しばらくしてテラスの方が騒がしくなり、様々な魔物が投げ込まれ始め、そして山の様に積み上げられた頃に返り血で髪も肌も赤く染まったソヴァージュが帰宅し、イザヨイへと報告した。
『逃げられないよう足は捕食。及び他の餌にしておきました。約五十は居るかと…』
『よろしい。では、貴女は少し離れて居なさい 折角の駒が贄になってしまっては困りますので…』
 足元で呻く魔物を見下ろしながらソヴァージュを少し遠くに離し、積み上げられた魔物へ向けて杖をかざすと、赤紫色の水晶が鈍く輝いたかと思うと、その場に積み上げられていた魔物達は全てその水晶へ吸い込まれるようにして消え去った。
水晶の輝き具合を確認し、納得したように彼は何回か頷いた。
『このぐらいなら…あの役立たずを蘇らせるには十分ですねぇ。 不本意ですが、さっさと済ますとしましょう』

何事も無かったかのように軽く振り返り、先程方陣を書いた場所の真ん中へ到着し、丁度あった瓦礫の鋭利な部分で指を斬り血を滴る事を確認すると、杖の先端にある水晶へ数滴ほど垂らす事で水晶は鈍く輝き始め、杖を一回転させて一気に地面に突き立てると方陣と右手の甲も鈍く赤に光り始めた。
 彼が呪文を唱えると、水晶の鈍かった光は明るく。だが妖しく輝きを増し、方陣の中に頭に牛の様な角を生やし深緑色の鱗と鋭い紅い眼をした一匹の巨大な蛇が薄くだが姿を現し始め、最後に呪文を唱え終わったと同時にもう一度杖を突き立てると、目を覆う程の強い光がその場を照らしたかと思うと方陣の中にはあの時リックに浄化された上級魔物トレイタが完全に蘇ってしまった。
 とぐろを巻いた姿のまま軽く辺りを見回していたが、下の方でこちらを睨む様に見上げる様にしていたイザヨイと目が合ったので、そちらへと視線を移した。
 トレイタの言葉は伝わらないので間にソヴァージュを入れて会話を成立させた。
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